心臓再同期療法(読み)シンゾウサイドウキリョウホウ

デジタル大辞泉 「心臓再同期療法」の意味・読み・例文・類語

しんぞうさいどうき‐りょうほう〔シンザウサイドウキレウハフ〕【心臓再同期療法】

重症心不全左右心室が収縮するタイミングにずれが生じ、血液を効率よく送り出せない状態になったとき、ペースメーカーによって左心室右心室に同時に電気刺激を加え、心室の動きを正常に戻す治療法。CRT(Cardiac Resynchronization Therapy)。両室ペーシング
[補説]左心室と右心室を同時にペーシングする機能を備えた特殊なペースメーカーを患者の体内に植え込み、通常は鎖骨下の静脈から3本リード線を挿入し、右心房・右心室・冠静脈洞(左心室の外側)に留置する(患者の状態によっては、心臓の外側にリードを取り付ける場合もある)。これらのリードによって、心臓の動きを常時監視し、心不全の症状が生じると、リードを通じて自動的に電気刺激が与えられる。心室細動を併発しやすい患者の場合は、除細動機能を備えたCRT-Dと呼ばれる装置が使用される。→植込み型除細動器

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「心臓再同期療法」の解説

心臓再同期療法
(循環器の病気)

治療法の概要

 心臓再同期療法は心不全に対するペースメーカー治療です。呼吸困難や浮腫(ふしゅ)(むくみ)が生じる心不全では、心室(とくに左心室)の壁の動きが減弱していますが、さらに心室壁の動きのタイミングが大きくずれていることがあります。これを心室非同期といいます。心臓再同期療法はこのように動きのタイミングのずれている心室の2カ所を同時にペーシングすることによって、心臓を効率よく働かせる治療法です。

 薬物内服によってもよくならない中等度から重度の心不全で、心電図検査心エコー超音波)で心室非同期が認められる患者さんのみがこの治療法の対象になります。このような患者さんには重症の心室不整脈(心室頻拍や心室細動)もあることが多いので、除細動機能が付いている機種もあります。

装置による治療の方法

 通常のペースメーカーや植込型除細動器と同様に、前胸部の皮下に本体を植え込みます。心室用のリード線は、通常の右心室内と左心室の外側にある冠状静脈洞のなかに留置します(図25)。この2カ所から同時に電気刺激を送ることによって、心室壁の動きを同期化させます。

 心臓再同期療法の問題点として、冠静脈洞内の理想的な場所にリード線を留置できない場合があることと、思ったほど効果が得られない場合があることです。再同期療法で効果が得られない患者さんは約20~30%といわれています。このような心臓再同期療法の効果のいかんにかかわらず、内服薬服用は続けなければなりません。また、心不全の原因となる心臓病の治療ももちろん必要です。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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