心臓拡張(読み)しんぞうかくちょう(その他表記)cardiac dilatation

改訂新版 世界大百科事典 「心臓拡張」の意味・わかりやすい解説

心臓拡張 (しんぞうかくちょう)
cardiac dilatation

心臓内腔容積が増大した状態をいう。心房では起こりやすく,治療によって復元しやすいが,心室の拡張は徐々に起こり,肥大をも伴い,高度になると復元しにくい。大動脈弁閉鎖不全などでは,正常の4倍以上も心室が拡大する。内径が拡張すると,同じ内圧でも壁にかかる張力は増大し,これがさらに拡張を助長する。心臓弁膜症などの心臓の病気や,極端な過労貧血などによって,心臓に負担がかかることによって起こる。たとえば,僧帽弁狭窄症では左心房の血液が十分左心室へ流れなくなり,僧帽弁閉鎖不全では左心室の血流が左心房に逆流する。このようにして左心房に血流がたまると内圧も上昇し,左心室が拡張する。心房中隔に欠損孔があって,左心房から右心房へ血液が短絡したり,肺動脈弁狭窄があると,右心室に血流が多く流れ,鬱滞(うつたい)が起こって右心室が拡張する。

 心臓拡張は心エコー図のほか,胸部X線検査,心筋シンチグラム,心血管造影,心電図などで確認される。

 治療はまず減負荷療法で血管拡張薬アンギオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬のほか,β遮断薬が用いられ,強心薬も適応となる。心室の拡大の著しい場合,弁膜症では弁置換手術や弁形成術の適応となる。心不全を伴い治療効果のみられないときは,心移植や心室縮小手術(Batista手術)も行われる。
心臓肥大
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