急度(読み)きっと

精選版 日本国語大辞典 「急度」の意味・読み・例文・類語

きっ‐と【急度・屹度】

  1. 〘 副詞 〙
  2. [ 一 ] 動作、行為が、物理的、心理的にゆるみのない状態で行なわれる時の、そのゆるみのないさま。
    1. 瞬間的に集中して行なわれるさま。さっと。
      1. [初出の実例]「志保見きっとみて矢にちがはむと頸をうちふりたれ共」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)中)
      2. 「きっと来て啼て去りけり蝉のこゑ〈胡故〉」(出典:俳諧・続猿蓑(1698)夏)
    2. 確固としていてゆるみがないさま。きびしく。厳重に。きっぱり。きちんと。
      1. [初出の実例]「両眼より泪を浮べて、行きも過ぎざりけるを、父屹(キッ)と是を見て」(出典太平記(14C後)一〇)
      2. 「帯をきっと固く締直してやれば」(出典:姉と弟(1892)〈嵯峨之屋御室〉二)
    3. 特に心身を緊張させたさま。しっかと。じっと。
      1. [初出の実例]「『急度とらえて居よ』『心得た』」(出典:虎寛本狂言・柿山伏(室町末‐近世初))
    4. 意志、決意などの決定的なさま。是が非でも。
      1. [初出の実例]「右の御さん用はかさねてきっといたさるるでござらふず」(出典:虎明本狂言・千鳥(室町末‐近世初))
  3. [ 二 ] 判断、推定がほぼ確実、また、確実であってほしいと希望する時の、その確実なさま。間違いなく。
    1. ある動作が行なわれる、または、ある状態であることが確実なさまにいう。必ず。
      1. [初出の実例]「此恋首尾能(よく)取持なば、〈略〉急度(キット)御礼申事じゃ」(出典:浮世草子傾城色三味線(1701)江戸)
      2. 「坊や辛いのはどこと聞くと屹度舌を出すから妙だ」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三)
    2. ある事がらについて、自分の推測が確実であると信ずる時にいう。
      1. [初出の実例]「屹度そうじゃ」(出典:颶風新話(航海夜話)(1857)初)
      2. 「急度(キット)心配して居るだろうから」(出典:良人の自白(1904‐06)〈木下尚江〉後)
    3. 相手に、必ずこうしてほしいと要望する気持を表わす。必ず。「きっと来てね」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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