落語の一ジャンル。文政(ぶんせい)(1818~30)のころに江戸の初代林屋正蔵が「妖怪(ばけもの)ばなし」の名で口演したのを祖とする。幽霊や妖怪(ようかい)を扱い、『もう半分』『三年目』などのような一席物と、三遊亭円朝作『真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)』『怪談牡丹灯籠(ぼたんどうろう)』『怪談乳房榎(ちぶさえのき)』などのような続き物の長編がある。後者では幽霊出現のくだりになると、高座のろうそくの灯を消し、鳴物を入れ、照明を用い、前座が幽霊に扮(ふん)して現れ、ときには背景の道具の前で演者が衣装を引き抜いて見得を切ることもあった。これは芝居咄の趣向を取り入れたもので、咄を盛り上げるのに有効だった。怪談咄は江戸で盛行したが、上方(かみがた)でも近世後期に立川三五郎が『四谷(よつや)怪談』『累(かさね)怪談』などを演じた。芝居咄式の怪談咄は、江戸で正蔵代々に継承されて近代に及んだが、8代目林家正蔵が努力して昭和まで伝えた。講談でも7代目一竜斎貞山(いちりゅうさいていざん)が得意とした。古風な演出の怪談咄は、科学の進歩した現代社会にあわなくなったため、演者も少なく、消滅の運命をたどりつつある。
[関山和夫]
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