惻隠(読み)そくいん

精選版 日本国語大辞典 「惻隠」の意味・読み・例文・類語

そく‐いん【惻隠】

〘名〙 ある対象同情、あわれみの心を抱くこと。かわいそうに思うこと。
続日本紀‐天平八年(736)七月辛卯「比来、太上天皇寝膳不安、朕甚惻隠、思欲平復
集義和書(1676頃)一二一体の仁感じて惻隠の情発するは不已。然れども、しゐて思ふは非なり」 〔孟子‐公孫丑〕

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デジタル大辞泉 「惻隠」の意味・読み・例文・類語

そく‐いん【×惻隠】

かわいそうに思うこと。同情すること。「惻隠の情を催す」

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普及版 字通 「惻隠」の読み・字形・画数・意味

【惻隠】そくいん

あわれみいたむ心。〔孟子、公孫丑上〕今、人乍(たちま)ち孺子(じゅし)の將(まさ)に井に入らんとするを見ば、皆(じゅつてき)(驚き危ぶみ)惻隱の心り。

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世界大百科事典(旧版)内の惻隠の言及

【愛】より

… 中国の〈〉には,多くの訓詁があるが,〈人間(男)であること・人間(男)らしさ〉が本義で,早い時期に,〈任(重い任務)〉〈人と人の間でもつべき態度・他者へのいたわり〉などの語感が,複合したものであろう。家父長的な義務感を出発点とし,〈天〉の〈命〉によるという使命感に支えられ,弱者への〈惻隠の心〉とともに,一人前の人間としての責任をまっとうしうる〈能力〉をもつことが,重視された。〈仁〉の,近きより遠きにおよぼす,現実主義的な性格にあきたらず,墨子は,〈兼愛(無私平等の愛)〉(兼愛説)を提唱したが,理想論にすぎぬとして,広く受けいれられなかった。…

【四端】より

…中国,儒教の主張の一つ。孟子によれば,人の身体に四つの手足があるように,心のなかにも惻隠(そくいん)(あわれみいたむ心),羞悪(しゆうお)(悪を恥じ憎む心),辞譲(譲りあう心),是非(よしあしを見わける心)の四つが本来的に備わっていて,これら四つの芽生え(四端)を,それぞれ仁,義,礼,智という完全な徳へとたいせつに育てあげねばならないという(《孟子》公孫丑上篇)。朱熹は仁義礼智を〈性〉(本性)とし,〈四端〉とはそれらが〈情〉として外に現れ出た〈緒〉(端緒,いとぐち)だと解釈する(《孟子集注(しつちゆう)》)。…

※「惻隠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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