《日本書紀》につぐ勅撰史書。六国史の第2。漢文編年体で,文武1年(697)1月から延暦10年(791)12月までを含み,全40巻。編纂過程は複雑であるが,《類聚国史》に収められている延暦13年8月13日付の藤原継縄の上表文と,《日本後紀》にみえる延暦16年2月13日付の菅野真道の上表文によって,概要が知られる。まず(1)文武~孝謙紀(文武1年1月~天平宝字2年7月)が淳仁朝に30巻として撰修されたが,その発議は藤原仲麻呂によるらしい。光仁朝に石川名足が淡海三船,当麻永嗣とともにこれに修正を加えて奏上したが,29巻のみで,問題の多い巻三十は亡失と称して削除された。名足はまたほぼ同時に上毛野大川と(2)淳仁~光仁紀(天平宝字2年8月~宝亀8年12月)を20巻に撰修した。さらに桓武朝に入ると,藤原継縄,菅野真道,秋篠安人が勅を受けて(2)を修正して14巻に改め,現《続日本紀》の巻二十一~三十四が完成し,794年(延暦13)8月に奏上された。ついでこれにつづく(3)光仁~桓武紀(宝亀9年1月~延暦10年12月)が菅野真道,秋篠安人,中科巨都雄によって4巻(現《続日本紀》巻三十五~四十)として撰修され,また同じ人たちによって(1)で欠けていた部分を補充して改めて20巻に再編され(現《続日本紀》巻一~二十),併せて797年(延暦16)2月に奏上された。かくて現在の(1)20巻,(2)14巻,(3)6巻がまとまって《続日本紀》が完成した。写本としては蓬左文庫所蔵の金沢文庫本,天理図書館所蔵の吉田兼右本などが古く,注釈書には河村秀根《続紀集解》,村尾元融《続日本紀考証》,佐伯有義校訂標注《続日本紀》などがある。《新訂増補国史大系》所収。
執筆者:岸 俊男
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『日本書紀』に続く勅撰(ちょくせん)の歴史書。40巻。「六国史(りっこくし)」の2番目。697年(文武天皇1)より791年(延暦10)に至る95年間を編年体で叙述する。797年(延暦16)に全40巻が完成・奏上されたが、それまでの編集過程は複雑である。その概要は、『類聚国史(るいじゅうこくし)』所収の延暦(えんりゃく)13年8月13日付けの藤原継縄(つぐただ)の上表文と、『日本後紀(こうき)』にみえる延暦16年2月13日付けの菅野真道(すがののまみち)の上表文によって知られる。前半の文武(もんむ)朝より聖武(しょうむ)朝に至る部分の草稿は比較的早くつくられ、光仁(こうにん)朝ごろまでに孝謙(こうけん)天皇紀とあわせて30巻に編集されたが、その後、問題の多い757年(天平宝字1)を扱った1巻が紛失し、光仁朝に石川名足(いしかわのなたり)、淡海三船(おうみのみふね)、当麻永嗣(たいまのながつぐ)らが残りの29巻に補修を加えて奏上した。後半の部分は758年から777年(宝亀8)までが、光仁朝に石川名足、上毛野大川(かみつけぬのおおかわ)らによって20巻に編述され、桓武(かんむ)朝に藤原継縄、菅野真道、秋篠安人(あきしののやすひと)らがこれを修正して14巻とし、続く778年から791年までの部分は、継縄、真道、中科巨都雄(なかしなのこつお)らにより6巻に編集され、758年以降の部分はあわせて20巻となった。また同じ人々は前半の29巻を修正するとともに、紛失した巻を改めて撰述し、あわせて20巻に編集し直した。こうして前後合計40巻が完成した。ただし継縄は奏上の前年に死去した。記事内容は、根本史料に忠実で信頼しうるが、一部に記事の重複や配列の誤りもある。古写本では鎌倉時代の金沢(かねさわ)文庫本(蓬左(ほうさ)文庫蔵)が最古。『国史大系』所収。注釈書には村尾元融著『続日本紀考証』、佐伯有義著『校訂標注続日本紀』がある。
[直木孝次郎]
『坂本太郎著『六国史』(1970・吉川弘文館)』
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六国史(りっこくし)の一つ。「日本書紀」に続く第2番目の勅撰の正史。40巻。編纂過程はかなり複雑で,前半20巻は菅野真道(すがののまみち)ら,後半20巻は藤原継縄(つぐただ)らが編纂し,最終的には797年(延暦16)に完成,奏上された。前半は文武天皇が即位する697年8月から,孝謙天皇が譲位する758年(天平宝字2)7月まで,後半は淳仁天皇が即位する同年8月から桓武天皇の791年(延暦10)12月までを記す。前半と後半は成立の経緯を異にするので,記述内容の詳密さや体裁にかなり差異がある。「日本書紀」に比べて潤色が少なく,奈良時代についての根本史料として重視されている。また引用されている宣命(せんみょう)も,国語学的に貴重である。「新日本古典文学大系」「新訂増補国史大系」所収。
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