日本大百科全書(ニッポニカ) 「扁桃腫瘍」の意味・わかりやすい解説
扁桃腫瘍
へんとうしゅよう
(1)咽頭(いんとう)扁桃良性腫瘍 きわめてまれである。
(2)咽頭扁桃悪性腫瘍 悪性リンパ腫が咽頭扁桃に原発することがある。症状は鼻閉(鼻づまり)が主で、耳管口を圧迫して耳管狭窄(きょうさく)をおこし、伝音難聴をきたす。頸(けい)部リンパ節の転移が早く、これが初発症状のこともある。治療は放射線療法と抗癌(がん)剤の投与が主である。早期に治療すれば、予後はかならずしも悪くない。
(3)口蓋(こうがい)扁桃良性腫瘍 乳頭腫、血管腫、腺(せん)腫をはじめ、種々のものが発生するが、その頻度は低い。症状は少なく、ときに異物感がある程度である。
(4)口蓋扁桃悪性腫瘍 まれではない。癌が多く、肉腫、悪性リンパ腫がこれに次ぐ。症状は初期に少なく、軽度の異物感があるだけで、進展すると軽度の疼痛(とうつう)、嚥下(えんげ)困難、血痰(けったん)などがみられる。頸部リンパ節転移がおきてから診療を受けることも少なくないが、早期治療をしないと予後はよくない。治療は放射線照射、手術、抗癌剤投与を行う。
(5)舌根扁桃良性腫瘍 きわめてまれである。
(6)舌根扁桃悪性腫瘍 比較的まれであるが、癌や悪性リンパ腫がある。症状は口蓋扁桃悪性腫瘍とほぼ同じであるが、進展してくると嚥下障害、喉頭(こうとう)へ浸潤すると嗄声(させい)(かれ声)や呼吸障害が現れる。予後はきわめて悪い。
[河村正三]