かれ声(読み)かれごえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「かれ声」の意味・わかりやすい解説

かれ声
かれごえ

声の音色が病的に変化し、雑音成分が混入している音声障害の一種嗄声(させい)ともいう。その声を聞いた感じから失声(しっせい)、気息(きそく)声、粗ぞう声などに分類される。

 失声は、かれ声の程度がもっとも高度のもので、声帯は振動せず、肺からの呼気が声門左右の声帯の間)を通るときに気流性の雑音をおこす。ささやき声に似た声しか出せない。ヒステリー、両側反回神経麻痺(まひ)、高度の喉頭(こうとう)炎や腫瘍(しゅよう)などによって、発声時に左右の声帯がほとんど動かず、声門が大きく開大したままになっている場合にみられる。

 気息声は、発声時に声門が狭くはなるが、閉鎖が不完全で息が漏れるために雑音が混入するもので、大きな声が出せないのも特徴の一つである。一側の声帯が麻痺して動かないときや、喉頭癌(がん)のために声帯の可動性が冒された場合などによくみられる。

 粗ぞう声は、いわゆる「がらがら声」であり、ある程度大きな声も出せる点が気息声と異なる。声帯の運動は冒されないので、発声時に声門は閉じようとするが、声帯に付着している粘液や声帯の腫(は)れのために声門が完全には閉鎖せず、声が濁って低調性の雑音成分が多くなる。声帯炎声帯ポリープ、歌人結節(謡人結節)、喉頭癌の初期などにみられる。

 かれ声の原因は多種多様であるが、頻度のもっとも高いものは、かぜによっておこる喉頭炎である。この場合、1週間から10日間くらいで治癒するのが普通で、2週間以上も続く場合には喉頭の精密検査が必要となる。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のかれ声の言及

【嗄声】より

…俗に〈かれ声〉〈しわがれ声〉などといわれるが,医学の領域では,こういった声の音質の異常を一般に嗄声という。喉頭とくに声帯を中心とする病気では,最も高頻度にみられる症状の一つである。…

※「かれ声」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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