日本大百科全書(ニッポニカ) 「抉入石斧」の意味・わかりやすい解説
抉入石斧
えぐりいりせきふ
弥生(やよい)時代の木工具として、太型蛤刃(ふとがたはまぐりば)石斧、扁平片刃(へんぺいかたは)石斧とセットをなす、柱状片刃石斧の一変種。「けつにゅうせきふ」ともよぶ。柱状片刃石斧の刃は片側から45度前後の角度で切り落としたようにつけられるが、その刃の斜面の反対側に「えぐり」を施して、柄を緊縛する際の便を図ったものをいう。この場合一端が短く屈曲する膝柄(ひざえ)は刃と直交するように着装されることになる。中国の長江(ちょうこう)(揚子江(ようすこう))下流域にみられる有段石斧からの出自が考えられるもので、日本と朝鮮半島南部にのみ分布する。半月形外湾刃の石包丁や朝鮮系の磨製石鏃(せきぞく)、磨製石剣などとともに、稲作の到来した道を暗示する遺物として重要である。
[加納俊介]