木工具(読み)もっこうぐ

改訂新版 世界大百科事典 「木工具」の意味・わかりやすい解説

木工具 (もっこうぐ)

木材を素材に,主として手技のみの作業で,さまざまなものを作るときに用いられる,截断,切削またはその補助用の各種の道具類の総称太古から木材は人間生活にかかわり合いが深く,これを加工するための木工具は,農耕具や狩猟具とともに,もっともなじみの深いものである。木工具は長い間にきわめて洗練された形と機能を持ち,そのさまざまな機能は,現代の工作用諸機械類にそのままうけつがれていることが多い。伝統的に木造建築が主体であった日本においては,〈大工道具〉がよく知られているが,ここではこれも木工具の一部として扱う。

 先史時代,樹を伐り,割り,削るには石器石斧,石刃)が用いられたが,弥生時代に鉄が導入されてしだいに鉄器に代わり,古墳時代になり,鉄器が国内で自製されるようになって,鉄器工具の種類と量も増した。4世紀から6世紀にかけての古墳や遺跡から出土した多くの(ちような),(のこぎり)(まだ木材用とはいい難いが),(鐁)(やりがんな),きり),(のみ),(つち),(たがね)などはこのことを物語っている。弥生時代から古墳時代にかけて,各地の豪族の庇護支配下に,しだいに多くの専門技能工が育ち,木工においても殿舎の建造,造船,祭儀用具,農耕・機織用具,生活のための調度什器などの製作が盛んになり,技法,工具はしだいに精緻になった。さらにこのころ朝鮮半島より堂塔,造船,馬具(鞍)作りなどの技術者の渡来が相次ぎ,これらの渡来技術者が大陸,半島の新しい技法や工具などをもたらした。律令制度のもとに,木工寮(もくりよう),鍛冶司(かぬちのつかさ),筥陶司(はこすえのつかさ)などの官司の工房が確立し,木工の工具や技法は,台鉋(だいがんな)()と縦挽用鋸を除いて,今日とほとんど変わらないほどの発達をみた。

木工業は作るべき対象によって土木,造船,建築から,櫛,箸,楊枝(ようじ)にいたるまで,あるいは伐木,造(製)材,小割にいたる多くの職種に分かれる。これらの職種では基本的なものとして共通に用いる工具も多いが,各種の仕事に適した独特の工具が工夫され用いられている。あるいは同じ形や機能の工具でも職種によって寸法が異なり,呼び名が異なるものもある。表はおもな職種ごとに用いられる主要木工具を挙げたものである。

欧米はじめ諸外国にもほとんど日本と同じような木工の職種がある。したがってその保有する工具も,形や機能の点で日本のものと大差ない。しかし風俗や習慣の差異と同様,木工の技法にも微妙な差がある。そのもっとも顕著なのは,日本の鉋や鋸が引き使い形式であるのに対し,欧米をはじめ中国,朝鮮半島を含む諸外国はすべて押し使い形式である。日本の鋸や鉋は,もともと中国から渡来したといわれ,初期には日本でも押し使いであったのだが,生活や作業様式の変化につれて,いつしか引き使いに変わったものであろう。その他の工具でも,一見同じように見えるが,刃や柄の形などに微妙な違いがある。
大工
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百科事典マイペディア 「木工具」の意味・わかりやすい解説

木工具【もっこうぐ】

木材の加工に使用する手工具。(のこぎり),(かんな),(のみ),(きり),鉄鎚(かなづち)のほか曲尺(かねじゃく),罫引(けびき),釘抜等種類が多い。また電動木工具も広く使われている。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木工具」の意味・わかりやすい解説

木工具
もっこうぐ
woodworking tool

木材を加工するための道具。日本ではほとんどが木造建築であったため,古来から種々の木工具が使われてきた。古墳時代の出土品や正倉院の宝物から,斧,錐,手斧 (ちょうな) ,槌,横挽 (び) き鋸,のみ,槍鉋 (やりがんな) などがあったことがわかる。中世後期になって,縦挽き鋸と台鉋が出現し,縦挽き鋸で多量の薄板が容易につくれるようになり,台鉋で木材仕上げは画期的な発展をした。台鉋から,平鉋のほかに溝鉋,丸鉋など種々の鉋が工夫され,明治になって,二板鉋ができた。また加工する寸法や位置を決めるための,差し金,巻尺,罫引 (けびき) ,墨さし,墨壺などもある。現在では,電動式の木工機械が開発されている。

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世界大百科事典(旧版)内の木工具の言及

【木工芸】より

…弥生時代には漸次鉄製工具も普及し,各種の生活用具も豊かになった。椀や高杯には明らかに木工具としての轆轤の使用も認められ,その接合部には枘仕口(ほぞしぐち)の手法もうかがわれ木工技術に進展がみられる。古墳時代には鉄製木工具の急激な機能上の発達をみ,また多数の工人の渡来により,飛躍的な技術の進歩がもたらされた。…

※「木工具」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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