改訂新版 世界大百科事典 「投写形テレビジョン」の意味・わかりやすい解説
投写形テレビジョン (とうしゃがたテレビジョン)
projection television
映写スクリーンに大画面のテレビ画像を表示できる投写形受像装置。テレビジョン拡大投影装置,あるいはビデオプロジェクターvideo projectorなどとも呼ばれる。投写形テレビジョンは方式的に,(1)受像管投写形ディスプレー,(2)ライトバルブ,(3)レーザーディスプレーに分類される。
(1)は高輝度の受像管と拡大投写用光学系を組み合わせたもので,投写用光学系に屈折レンズを用いた,単純な構成の屈折式と,凹面鏡を用いた反射式がある。後者は凹面鏡の収差の補正に非球面のシュミットレンズを用いるので,シュミット式とも呼ばれている。この基本構成を図1に示す。一般的に,画質は屈折式が優れ,出力光束の大きさでは反射式が優れている。しかし,凹面鏡を真空バルブの内側に内蔵させ,さらにメニスカスレンズを付加して,画質を向上した高品位テレビ用の反射式高性能投写管が日本で開発された。この構成を図2に示す。
(2)のライトバルブとは光を制御する弁を意味する。それは図3に示すシュリーレン光学系によって構成される。これは図のように入力マスク,シュリーレンレンズ,出力マスクからなる結像系と,ターゲット,投写レンズ,スクリーンからなる結像系とが一部オーバーラップしている光学系であり,ターゲットに光学的ひずみがない場合は入力マスクから出射した光束がすべて出力マスクで遮断され,ひずみが発生した場合にはひずみの量に応じて出力マスクから光束がもれてスクリーンに達する。このとき,スクリーンにはターゲット面の像が結像されているのでターゲット各部のひずみのパターンが光の強度のパターンとなって現れるという巧妙な仕組みになっている。このターゲットは真空容器中に油膜でつくられ,電子ビームによって表面に凹凸のひずみが形成される。このライトバルブの実用機としては,アイドホールとゼネラルエレクトリック社のビデオプロジェクターがある。
(3)は赤,緑,青,3本のレーザー光線によって,直接,映写スクリーン上にテレビ画像を描くもので,装置は大がかりになるが,最高の画質が得られる。NHKと日立の共同研究によって,高品位テレビ用のレーザーディスプレーが1973年に開発されている。レーザー光源には,2Wのクリプトンイオンレーザー(赤)および8Wのアルゴンイオンレーザー(緑と青)が用いられ,レーザービームの走査は高速回転多面鏡とガルバノメーターの組合せを採用している。レーザーディスプレーの最大の特長は色の美しさにある。とくに自然界に存在しない幻想的な色(超自然色)を表現できるのはレーザーディスプレーのみである。
執筆者:種田 悌一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報