雌雄の個体が体を密着させて互いの生殖口を近づけ,雌の産卵と同時に雄が精液をかける行為で,体外受精を行うカエルなどに見られる。カエルは,春になると生息地である陸から水辺の繁殖地へ移動してくる。この時期の雄は,mating callと呼ばれる鳴声を発し,雌を抱きかかえる(clasping)ためのこぶが前肢の指のつけ根に発達してくる。繁殖地では,雌は産卵を終えると陸へ戻るため,雄は雌よりはるかに多い。雌をめぐって雄どうしで争いが起こるが,最終的には,体の大きな雄が雌とつがいになり,産卵が始まる。雌は,雄のmating callをきき分けて,大きな雄を選ぶと考えられている。最終的に大きな雄とつがいになる意義は高い受精率にあるらしい。受精には,雌の放卵と雄の放精が同時に起こることが必要だが,小さな雄とのつがいは,放卵,放精の時期がずれ,また雌雄の生殖口の間に距離があるため,卵の受精率は低くなる。
執筆者:島田 義也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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