捺印法(読み)なついんほう(その他表記)Stamp Act

翻訳|Stamp Act

改訂新版 世界大百科事典 「捺印法」の意味・わかりやすい解説

捺印法 (なついんほう)
Stamp Act

1712年,アン女王治下のイギリスで事前検閲による言論統制にかわる有効な手段,あわせて国庫収入増にもなる方策として制定された法律。下院通過5月16日,無修正で5月22日上院通過,8月1日施行された。課税の対象は新聞紙,パンフレット,紙などで,経済的側面からメディアを統制する方式の典型であった。18世紀末フランス革命の衝撃を受けて,主として社会下層の読者を対象にした急進的新聞,週刊誌が群生すると,この法律は,その普及拡大をくいとめる格好防波堤として活用された。フランス,アメリカでは1830年代に安い値段の大衆紙出現・定着するのに反し,イギリスではこの法律のために合法的廉価紙は生まれず,その発展はながく押しとどめられた。急進・啓蒙的中産階級のジャーナリズム関係者は労働者階級の運動家と結び,この法律を〈知識への課税taxes on knowledge〉と表現し,開明的政治家を動かして,撤廃運動を展開した。パンフレットへの課税は1833年に廃止,新聞紙への課税は36年に1ペニーに引き下げられ,広告税は1853年に,新聞は55年に全廃された。しかし,紙への課税は61年まで残った。
印紙税法
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の捺印法の言及

【イギリス】より

…31年にはケーブEdward Caveが《ジェントルマンズ・マガジン》を出し,総合雑誌の原型をつくった。 しかし,紙,広告に課税してメディアを経済的に統制する1712年の捺印法は19世紀(基本部分の撤廃は1855年)まで威力を振るい,フランス,アメリカが1830年代に現実化した新聞の民衆化,安い大衆紙の出現を妨げた。新聞の本格的大衆化は,1896年,ノースクリッフの創刊した《デーリー・メール》に始まる。…

※「捺印法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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