印紙税法(読み)いんしぜいほう(その他表記)Stamp Act

翻訳|Stamp Act

改訂新版 世界大百科事典 「印紙税法」の意味・わかりやすい解説

印紙税法 (いんしぜいほう)
Stamp Act

アメリカ駐屯軍費の一部植民地人に負担させるため,1765年3月に制定されたイギリス議会法。印紙新聞,暦,パンフレット証書公文書など多様な印刷物に貼付させ,年間6万ポンドの税収を見込んだ。しかし,植民地人の同意なく,本国議会が直接アメリカ植民地人に課税する最初のものであったので,〈代表なくして課税なし〉というイギリス自由人の権利を無視するものだとして,まず植民地商人間にイギリス商品不輸入協定が結ばれ,同年8月にはイギリス商品ボイコットの民衆運動に発展した。10月には9植民地代表26人がニューヨークで〈印紙税法大陸会議〉を開き,〈植民地人の権利と苦情の宣言〉を採択した。法律発効の11月が近づくにつれて暴動化し,各植民地の反英グループ〈自由の子どもたち〉は,印紙販売官を襲って辞任させ,砂糖税法反対から税関吏や不輸入協定を破る商人を襲った。打撃をうけた本国商人も議会に撤廃を働きかけ,翌年3月廃止された。この印紙税法一揆は,本国政府の植民地政策に対する先駆的な植民地連合抵抗運動であり,この経験からタウンゼンド諸法が制定されることになった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「印紙税法」の意味・わかりやすい解説

印紙税法
いんしぜいほう
Stamp Act

1765年3月22日に制定された北アメリカ植民地への課税法。邦語表記では従来「印紙条例」とも書かれた。イギリス本国の財政窮迫に対処するために、植民地に向けられた新規の税制で、公文書、証書、パンフレット、新聞などの印刷物に所定額の収入印紙の貼付(ちょうふ)を義務づけたものである。本国政府は、印紙税による収入を駐屯軍費用と密貿易取締り費用にあてようとしたが、これは植民地支配強化のための増税として、また従来本国の権限として認められていた関税徴収とは異なり直接課税であるという点で、植民地の大反対を巻き起こした。「代表なくして課税なし」No Taxation without Representationのスローガンのもとに、秘密組織「自由の子供たち」Sons of Libertyを中心とする民衆の実力行使が行われた結果、翌年3月撤回されたが、アメリカ独立革命へと導く一要因となった。

[島川雅史]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「印紙税法」の意味・わかりやすい解説

印紙税法
いんしぜいほう
Stamp Act

1765年3月 22日,イギリス本国議会が制定した,新聞,公文書,証書,手形など植民地のあらゆる印刷物に所定額の収入印紙を貼ることを命じた法律。そこからの収入を駐屯軍費用と密貿易取締り費用にあてようとしたもの。これは 13の植民地全体,商人,農民漁民,弁護士,出版業者,牧師などあらゆる階層,職業に影響が及ぶものであったにもかかわらず,植民地議会の同意を得ていないということから,イギリス憲法により保障されている植民地の権利を無視するものとして,「代表なくして課税なし」という言葉に集約される広範な反対運動を引起した。反対運動は,植民地議会や各地の反対決議,9植民地代表による印紙税法会議開催,街頭デモ,印紙指定販売人襲撃,イギリス製品の不買などの形をとり,イギリス本国でも反対運動が起り,66年3月撤回された。

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百科事典マイペディア 「印紙税法」の意味・わかりやすい解説

印紙税法【いんしぜいほう】

1765年英国が北米植民地にアメリカ駐屯軍費の一部を負担させるため,同地発行の新聞,証書などに印紙をはることにした英国議会法。植民地の反対で1766年撤回。反対運動の成功は植民地人に自信を与え,アメリカ独立革命の序曲となった。
→関連項目砂糖税法フランクリンヘンリー

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世界大百科事典(旧版)内の印紙税法の言及

【捺印法】より

…1712年,アン女王治下のイギリスで事前検閲による言論統制にかわる有効な手段,あわせて国庫収入増にもなる方策として制定された法律。下院通過5月16日,無修正で5月22日上院通過,8月1日施行された。課税の対象は新聞紙,パンフレット,紙などで,経済的側面からメディアを統制する方式の典型であった。18世紀末フランス革命の衝撃を受けて,主として社会下層の読者を対象にした急進的新聞,週刊誌が群生すると,この法律は,その普及拡大をくいとめる格好の防波堤として活用された。…

【アメリカ独立革命】より

…まず,63年イギリス政府は〈国王の宣言〉により,アパラチア山脈以西の新領土への植民地人の移住を禁止し,インディアンとの摩擦をさけ,また毛皮産業を本国側に確保しようとし,植民地農民の反発をかった。また,イギリス政府は,アメリカにおける軍事費を植民地側にも分担させるということで,本国議会による植民地人への課税を計画,64年収入の目的で砂糖に対する関税(砂糖税法)が課せられ,65年には新聞,パンフレット,証書類などに対する印紙税法が制定された。従来本国議会による植民地人に対する直接の課税はなかったので,この税は植民地人の強い危惧を引き起こし,アメリカ全土に反対運動が起こり,65年10月にはニューヨークで9植民地の代表が会して印紙税法会議を開き,本国に対し抗議を行う。…

※「印紙税法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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