コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

言論統制 ゲンロントウセイ

4件 の用語解説(言論統制の意味・用語解説を検索)

デジタル大辞泉の解説

げんろん‐とうせい【言論統制】

公権力検閲制度などの手段を用いて、言論・表現を制限すること。

出典|小学館 この辞書の凡例を見る
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版の解説

げんろんとうせい【言論統制】

国家が公権力によって民衆の表現活動を制限すること。政治権力が特定の目的を達成するため,それを阻害し,または阻害するおそれのある表現,つまり好ましくない表現を抑圧することである。このような言論統制には多くの場合,他方にそれと見合うプロパガンダ(政治宣伝)が伴う。例えば,反戦的言論を統制する一方で,〈聖戦〉意識の宣伝による民衆の戦争に対する自発的献身を調達するというように,言論統制とプロパガンダとは機能的には盾の両面の関係にある。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. 収録データは1998年10月に編集製作されたものです。それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。また、本文中の図・表・イラストはご提供しておりません。

大辞林 第三版の解説

げんろんとうせい【言論統制】

支配者が検閲その他の手段によって、新聞・ラジオ・テレビなどの報道や出版活動などを統制すること。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

言論統制
げんろんとうせい

政治権力が国民の文字、音声、画像映像などによる情報、意見あるいは思想の表現行為や流通を規制すること。言論統制は、統制の主体たる政治権力の性質の相違(たとえば封建国家民主主義国家、独裁国家、共産主義国家など)や、統制の目的の相違(たとえば政治的、軍事的、宗教的など)によって、統制の対象や方法などその態様に種々の違いがある。一般的には、政治権力の企図する一定の政治的・社会的秩序の形成や保持にとって有害で好ましくないと政治権力の側で判断した各種の表現が対象である。しかし、表現は、その乗り物である媒体(メディア)と不可分の関係にあるので、実際には表現とメディアが一体となった形で統制の対象となる。言論統制がメディア統制の様相を呈するゆえんである。そうした表現のメディアとしては新聞、雑誌、書籍、映画、放送などのマス・メディアが主であるが、演劇、演芸、集会、デモなどのいわゆる中間的メディア、さらにはデマ、個人的会話にまで及ぶことがある。[内川芳美]

方法と機構

統制の方法としては、言論統制を定めた特別法によるのが一般的だが、それを担保する実際の具体的手段は一様でない。たとえばよく用いられる手段としては、新聞・雑誌・書籍などの発行許可制度、放送の免許制度、集会・デモなどの事前許可制度、各マス・メディアの記事や放送内容、映画・演劇の脚本・台本などの検閲制度、違反事例に対して発売禁止、発行停止、発行禁止、放送禁止、上映・上演禁止、集会・デモの禁止などを命令できる行政処分制度や、関係者を逮捕し刑罰を科する司法処分制度などがある。さらには用紙、フィルム、電波などマス・メディア用の原料資源の割当て統制、マス・メディア企業の強制的な廃止・統合、業務・財政・人事に対する監督・介入などの例も少なくない。
 言論統制は、通常、政府の治安警察機構を通じて行われるが、戦時などの特殊事態やあるいはファシズムなどの全体主義国家や共産主義国家では、情報省、宣伝省、情報局などの言論・情報宣伝を総括的に担当する政府機関が設置される場合が多い。さらにこれに特別な政治・思想警察組織が随伴している例も少なくない。言論統制は、多くの場合、それと見合うプロパガンダ(宣伝)と同時に行われる。たとえば戦時に一方で反戦的言論を厳しく統制し遮断しつつ、他方で「聖戦」意識の高揚を宣伝するというように。この両者は機能的に密接に連結しているので、この二つを広義のプロパガンダとして統合的にとらえ、言論統制をその消極的側面、宣伝を積極的側面とする考え方も行われている。[内川芳美]

歴史


中国
政治権力が民衆の表現活動を取り締まるという意味での言論統制の歴史は国家または政治権力とともに古いと思われるが、史実としては、中国の秦(しん)の始皇帝(在位前247~前210)の例がもっとも古い。彼は大臣の李斯(りし)の献策をいれて、秦朝の政治方針に反する思想や人物を取り締まることとし、医薬書、卜筮(ぼくぜい)(占い)の書、農書以外のすべての書籍を民衆から提出させて焼き捨てる(「焚書(ふんしょ)」)一方、そういう思想を広めた儒学者たちを多数逮捕し、460余人を生き埋めにした(「坑儒(こうじゅ)」)とされている。[内川芳美]
欧米
ヨーロッパでは、15世紀から16世紀にかけてローマ教皇のカトリシズムに対する異端取締りが展開される過程で、1564年に作成された「禁書目録」Index Librorum Prohibitorumにより読書、著者、出版者、販売者などが規制された例がいちばん古い。また、新旧両教の対立過程で、1622年に教皇グレゴリウス15世が、カトリシズムの教義の積極的な宣伝を目的として「布教聖省」Sacra Congregatio de Propaganda Fideを創設しているのが注目される。組織化された宣伝の最初といわれている。中世社会が崩壊し世俗国家の時代になると、言論統制も宗教的目的よりも政治的目的を主とするものへ転化する。16~17世紀の絶対王政期には、印刷出版の特許(許可)制度および事前検閲制度を基幹とする言論統制が行われた。イギリスの1586年の星室庁印刷条令や1662年の特許検閲法などはそのための典型的な法令である。
 近代的な立憲国家の成立後は、言論・出版や集会・デモなど表現の自由が基本権として憲法で保障されることになった。しかし政治権力は必要とあれば言論統制を強行した。ナポレオンはクーデターで統領となるや、1800年まず政論新聞を13紙に制限して新規の発行を禁止し、皇帝となった04年には共和派の有力紙『ジュルナール・デ・デバ』(論争新聞)を革命のにおいがするとして『ジュルナール・ド・ランピール』(帝国新聞)に改題を強制し、11年には同紙を接収して国営に移し、さらに同年政論新聞を4紙に減らし、地方紙を1県1紙に統合している。フランスでは第三共和政下の1881年「新聞自由法」が成立し、新聞はようやく安定的な自由を享受することになった。イギリスでも、18世紀以降も検閲など表現の事前抑制こそみられなくなったものの、たとえば「知識に対する課税」taxes on knowledgeといわれた印紙税(1712)や、事実の真偽にかかわらず国王や政府高官への批判を一方的に名誉毀損(きそん)として処罰できた治安妨害的誹毀(ひき)取締法Seditious Libel Actなどの運用によって、政府は言論統制の手綱を操った。
 20世紀に入り、第一次世界大戦が始まると、各国ともマス・メディアの世論への影響やその役割を重視するようになり、情報省や情報部を特設して、軍事情報の検閲をはじめとする戦時言論統制を推進した。しかし、戦争の武力戦から総力戦への質的変化と複雑化は言論統制の重要度をよりいっそう高めた。第一次大戦では自主的統制のたてまえをとったアメリカも、第二次大戦時には組織的な情報管理を行った。20世紀にもっとも組織的な言論統制を行ったのはナチス・ドイツで、ヒトラーは政権獲得直後の1933年2月、国会放火事件をでっちあげて、新聞・出版の自由を保障したワイマール憲法を大統領令によって停止させ、共産党および社会民主党系新聞約180紙を発行禁止に付した。また同年5月10日、左翼系はむろんユダヤ系や自由主義系など反ナチズム系の図書や雑誌を没収して焼き捨てた。他方、同年3月ゲッベルスを担当大臣とする国民宣伝啓蒙(けいもう)省が新設され、9月には国家文化院法による国家新聞院、国家出版院、国家映画院など各メディア・分野ごとの統制機関が設置された。10月に制定された新聞記者法は記者資格を定め、記者に登録義務を課していた。こうした組織的な言論統制とプロパガンダによって、ヒトラーは民衆のナチスへの同調を調達した。
 旧ソ連など共産主義国家では、共産主義のイデオロギーの強化鼓吹と反共的情報思想の排除を目的とした厳重な言論統制とプロパガンダが行われたのが特徴的。この特徴は、現在の中国にも基本的に当てはまる。新聞は「集団的宣伝者および集団的扇動者であるだけでなく、集団的組織者(オルガナイザー)」だとしたレーニンの規定は、放送にも適用されながら中国では今日も生きている。西側的な意味の言論情報の自由は存在せず、かつて旧東欧時代に言論の自由化を求めたチェコスロバキアの知識人たちの「プラハの春」の運動(1968)は、旧ソ連軍をはじめとするワルシャワ条約機構軍の戦車によって押しつぶされた。中国でも第二次天安門事件(1989)で、民主化を要求した学生たちの運動が、軍隊や公安警察の力で鎮圧された。[内川芳美]
日本
明治維新から1945年(昭和20)までの旧体制下の日本の言論統制は、世界で指折りの厳重なもので、日本を狂気じみた超国家主義や軍国主義に導いた原因の一つは言論統制にあったといっても過言でない。明治前期の言論統制のピークは、政府批判の言論が渦巻いた自由民権運動期であったが、もっとも激しかった1882年(明治15)には新聞の発行禁止12、発行停止70、演説会の解散282、演説禁止53という記録が残っている。大日本帝国憲法公布(1889)後も、新聞紙条例(1909年新聞紙法となる)をはじめとする多くの絶対主義的な言論統制法規が存在したため、「法律ノ範囲内ニ於(おい)テ」(大日本帝国憲法29条)認められていた言論表現の自由は、きわめて制限的なもので、あってなきがごとき状況であった。
 日本の言論統制の特質は、統制対象として天皇制批判を厳禁したこと、方法として内務大臣に広範な裁量を認めた行政処分権を与えたことにあるといえる。前者は1925年(大正14)の治安維持法の制定で峻烈(しゅんれつ)さを加え、社会主義的運動や言論はこれで根こそぎにされた。後者の運用はきわめて恣意(しい)的で満州事変後のファシズム期に入ると一段と厳しさを増し、自由主義的言論を含むすべての反天皇制的・反軍国主義的言論が一掃された。40年(昭和15)には、情報宣伝と言論統制の中央政府機関として情報局が設置されている。さらに国家総動員法(1938)、映画法(1939)、新聞紙等掲載制限令(1941)、国防保安法(1941)、言論出版集会結社等臨時取締法(1941)などの統制法規が次々に制定された。新聞・雑誌などのマス・メディア各社は強権的な企業統合を余儀なくされ、42年秋現在で日刊新聞はわずか55紙に整理された。検閲はますます厳重となり、掲載を禁ずる記事差止め命令も相次いだ。日本放送協会(NHK)の放送は開始当初から政府の強力な監督下にあった。民衆は目も耳も口もふさがれたといってよかった。凶暴な言論統制は敗戦という悲劇的破局とともに終わった。
 第二次大戦後、日本国憲法はいっさいの表現の自由を保障し、検閲の禁止を規定した(21条)。しかし国民は連合軍の占領下で、別の新たな言論統制のもとに置かれることになった。1945年9月19日、連合国最高司令部(GHQ)は新聞遵則に関する覚書、いわゆる「プレス・コード」を指令した。これに基づいて新聞・雑誌・書籍の事前検閲が、また、「ラジオ・コード」(同年9月22日付け覚書)によって放送の事前検閲が、占領軍批判をはじめ、占領目的達成に「有害」な言論情報の排除を目的として、それぞれ実施され、郵便検閲も実施された。これらの検閲は49年までには終わっている。しかし、朝鮮戦争が始まる(1950)と、米ソの冷戦を背景として『アカハタ』(現『赤旗』)をはじめとする日本共産党系紙の発行停止や、共産主義者のマス・メディア企業からの排除をねらったいわゆるレッド・パージが強行された。こうした占領軍の言論統制から脱却できたのは、講和条約締結による独立(1952)後のことであった。
 しかし、独立後も、個別には非公式な形での言論統制まがいの言論表現への圧力、たとえばベトナム戦争報道における日本テレビの番組「ベトナム海兵大隊戦記」(1965)の放映中止や、秘密保護立法化の動きなどがしばしば指摘されている。言論統制の動向には警戒が必要である。[内川芳美]
『伊藤正己著『言論・出版の自由』(1959・岩波書店) ▽内川芳美解説『現代史資料40・41 マス・メディア統制』(1973、75・みすず書房) ▽松浦総三著『占領下の言論弾圧』増補決定版(1974・現代ジャーナリズム出版会) ▽内川芳美・新井直之編『日本のジャーナリズム』(1983・有斐閣)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典内の言論統制の言及

【コミュニケーション政策】より

…一般的にいえば,一定の目的・理念のもとに,社会に流通する情報の内容,伝達媒体の技術的基準や経済的条件等を法制度的に秩序づける諸方策であり,比較的新しい概念である。政治権力は元来,社会に流通する情報の内容や性質に強い関心をもち,反権力的な情報の排除(言論統制)や,世論操作に意を用いてきた。これもコミュニケーション政策といえなくはなく,その意味ではコミュニケーション政策の歴史は政治権力とともに古いといえる。…

【焚書】より

…政治権力による思想・言論統制策の一つで,書物にもられた思想を禁圧し,その流通,伝播を防止するために,公開の場で当該の書物を焼き捨てる行為,儀式をいう。秦の始皇帝が行ったと伝える〈焚書坑儒〉は史上名高い。…

※「言論統制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
All Rights Reserved. Copyright (C) 2015, Hitachi Solutions Create,Ltd. 収録データは1998年10月に編集製作されたものです。それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。また、本文中の図・表・イラストはご提供しておりません。

言論統制の関連キーワード公教育国家権力公権力公領制限法貨パフォーマー民衆芸術食事制限タンパク質制限食ナトリウム制限食

今日のキーワード

トランスアジア航空

台湾・台北市に本拠を置く航空会社。中国語名は復興航空。1951年、台湾初の民間航空会社として設立。83年に台湾の国産実業グループに経営移管され、組織改編を実施した。92年に国際チャーター便の運航を始め...

続きを読む

コトバンク for iPhone

言論統制の関連情報