パンフレット(読み)ぱんふれっと(英語表記)pamphlet

翻訳|pamphlet

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パンフレット」の意味・わかりやすい解説

パンフレット
ぱんふれっと
pamphlet

冊子形式の一色もしくは多色使用の商業印刷物。製本仮綴(かりと)じ、ページは数ページから数十ページのものにわたる。規格としては、A5、A6、B5の各判が多いが、B4判、A4判の大きなものや変型のものもある。ほぼ同様な意味で使われるブックレットbookletとは、表紙をつけ、見返しや扉を配して本格的に製本し、本に近い体裁にしたものをいう。パンフレット語源には定説がなく、定義としては、その初期には大衆教化の宗教宣伝物を主としていたものが、一般の読み物に発展してきたように、「てっとり早く、より多くの、より広い範囲の相手に伝える印刷物」といえる。新聞、雑誌も最初はパンフレットで、のちにそれが内容、体裁の両面で分化し、それぞれがジャーナリズムの機能を発揮するようになった。今日では商業的な広報印刷物として主要な地位を占めているが、政治性を帯びた宣伝物としていまなお利用されている。パンフレットの最初は1601年、当時イギリス最大の商業組合であった冒険貿易商会のつくった『商業論』といわれる。日本では1786年(天明6)に黄表紙の創始者恋川春町(はるまち)が書いた『三舛増鱗祖(みますますうろこのはじめ)』という宣伝のために顧客に配った景物(けいぶつ)本が最初である。

[島守光雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パンフレット」の意味・わかりやすい解説

パンフレット
pamphlet

一般には宣伝,啓蒙のための小冊子のこと。 16世紀,宗教改革の時代にはイギリス,フランス,ドイツで盛んに出版され,ルターはそれを最も効果的に用いた。エリザベス朝のイギリスでは物語や自伝,社会批評などを盛ったパンフレット文学が生れた。 18世紀に市民社会が最も早く成立したイギリスで,特に政党や政治団体によって大衆を説得するための政治パンフレットが盛んにつくられ,トマス・ペインの『コモン・センス』 (1776) は絶大な影響力をもった。またフランスではルソー,ボルテール,モンテスキューらの啓蒙思想家がパンフレットを多作した。現代ではパンフレットは論争より情報のために出されるようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報