採炭機械(読み)さいたんきかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「採炭機械」の意味・わかりやすい解説

採炭機械
さいたんきかい

石炭採掘のための機械の総称。現在炭鉱では出炭の大部分を機械力で採掘しており、とくに緩傾斜層では出炭の90%以上が採炭機械に自走支保を併用した完全機械化採炭による。採炭の機械化は1870年ごろイギリスでコール・カッターを使ったのが最初といわれるが、1930年ごろからドイツでつるはしのかわりにコール・ピックが盛んに使われるようになった。自由面を増して発破やピックの採炭能率をあげるため炭壁に透(すか)しをつくるチェーン式コール・カッターは第二次世界大戦前後に日本でも盛んに使われたが、現在ではまったくみられない。コール・ピックも一部急傾斜層で採炭に使用しているだけである。

 現在、緩傾斜層の長壁(ちょうへき)式採炭切羽(きりは)では、コンベヤートラフをガイドとして切羽内を往復し炭壁を掘削するホーベルおよびドラム・カッターが主役である。ホーベルは第二次大戦中ドイツで考案された機械で、かんなのように炭壁を切削する。ホーベルはウェストファリア・リューネン社の技師レッベの改良により性能を高めて広く普及し、日本でも一時レッベ・ホーベルが盛んに使われた。その後さらに改良され、現在使われているのはライスハーケン・ホーベルとグライト・ホーベルの2種類であるが、これらは堅い炭層に使えず、自走支保との組合せもむずかしいという理由で、しだいにドラムカッターに座を譲り、現在では薄層や特殊な条件の場合にしか使われなくなった。

 ドラム・カッターの起源は1952年にイギリスのアンダーソン・ボイス社がつくったシャラー・ローダーである。その後各国で製作するようになり、最初固定式であったドラムが、アームの先につけたレンジング式のヘリカル・ドラムへと改良され、その結果、炭層厚の変化にあわせて全層を採掘できるようになった、現在ではダブルレンジング・ドラムで出力が300キロワット以上に及ぶ強力なものもある。これに対して炭柱式採掘はアメリカのジョイ社が開発したコンチニアス・マイナにシャトルカーを組み合わせたトラックレス方式によっている。以上、緩傾斜層の機械化が著しく進んでいるのに対して、急傾斜層ではロープソー、ラム、アラキなどの採炭機が導入されたが、現在まったく使われていない。このほか海外では石炭の露天掘りに、クローラードリルパワーショベルドラグライン、オーガマイナなどの大型機械が使われている。

[渡辺慶輝]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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