露天掘り(読み)ロテンボリ

デジタル大辞泉 「露天掘り」の意味・読み・例文・類語

ろてん‐ぼり【露天掘り】

石炭鉱石などを、坑道を作らずに地表から直接に掘り進んで採掘すること。鉱床が浅くて広い場合に行われる。おか掘り。
[類語]採掘採鉱採炭採油

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改訂新版 世界大百科事典 「露天掘り」の意味・わかりやすい解説

露天掘り (ろてんぼり)

露天採掘あるいは露天採掘法の慣用語で,坑内掘りに対する語。英語では,open-pit mining,open-cast mining,surface miningなどという。鉱床が地表に露出し,あるいは地表近くにある場合に行われる鉱石の採掘方法。鉱床の露頭や地表の表土石をはぎとって,すぐに鉱石の採取が行えるので,作業が単純で,機械類の導入も容易であり,しかも,坑内採掘にくらべて安全であるため,高能率で経済的な採掘が可能である。世界中で生産される金属鉱石のほぼ半分が露天掘りを行っている鉱山で採掘されており,それも大規模な採掘を行っている大鉱山からの鉱石であるという報告がある。日本では,金属鉱山や石炭鉱山で露天掘りを行っているところはごくわずかであるが,非金属鉱山や土石を採掘する鉱山の多くは露天掘鉱山である。とくに,世界第3位の生産量をあげている石灰石鉱山のほとんどが露天掘りである。

露天掘りは鉱床の性状によって最も適した方式が採用されるが,今日では,鉱床の頂部から階段状に採掘場を作って掘り下げる階段採掘法がもっとも普遍的である。日本の石灰石鉱山の多くは,鉱床が山地にあるため,山腹に大型機械類の登攀(とうはん)路を作って鉱床の頂部に至り,表土石をはぎとってから,高さ10m,幅20m以上程度の採掘ベンチを作って掘り下げるものが多い。採掘ベンチの上縁に大型のせん孔機械で数m間隔に爆破孔をせん孔し,爆薬を装てんして爆破する。下段の採掘ベンチの上に積まれた破砕石灰石を積込機ですくいとって,積込機自身で,あるいは数十t積みのトラックに積みかえて,破砕場へと運搬する。鉱床の内部や下盤の中に坑内破砕設備をもっていて,その場所から採掘ベンチの一隅立坑を掘り上げて,鉱石をそこに投入する方式も広く行われている。アメリカやカナダなど大陸の露天掘りでは,比較的平坦な地表からすり鉢状に掘り下げるものも多く,トラックやベルトコンベヤにより鉱石を運び上げる方式が行われる。

 石炭のように,鉱床が層状で地表近くに広がっている場合には,ストリッピングstrippingと呼ぶ方法で採掘が行われる場合がある。これは,まず鉱床の一部を数十mの幅で帯状に露出させて,そこの鉱石(石炭)を採掘する。次いで,この帯に隣接する部分の表土石をはいで,それをその前に採掘の終わった帯の中に投入して鉱石を露出させて採掘する。この作業を次々と繰り返しながら採掘を継続する方式である。

露天掘りが成功するかどうかを決める第1の要因は鉱床の深さであるが,その可能性を示すものとして剝土比(はくどひ)という語がよく使われる。単位の鉱石を採掘するのに,どれだけの廃土石を採掘しなければならないかを示すものであり,で表される。この値が大きくなれば,無価値の廃土石を掘りとるための費用が大きくなって全体のコストが増大するために,鉱石の経済的な採掘が行えなくなることは容易に理解されるが,この比は,採掘する鉱石の価値が高ければ,また,廃土石と鉱石の採掘コストが低ければ,それだけ大きくすることができることも示している。採掘がしだいに下方に移って剝土比が大きくなり,採掘を停止した鉱山や坑内採掘に移行した鉱山もあり,大型の剝土機械の導入で採掘コストを低減させて,露天採掘に成功した例もある。

 剝土比のほかにも露天採掘が行えるかどうかを決める要因がある。(1)排水量が大きくなる,(2)気象条件が適しない,(3)地表の構造物を動かすことができない,(4)景観,環境の破壊をもたらすなどは,露天採掘の実施を困難にさせる要因である。とくに,露天掘りでは,地表の土石を除去して採掘が行われるため,どうしても環境を破壊することになる。そのため,採掘が行われた後の跡地の問題を十分に検討し,必要な処置を講ずる必要があるが,採掘跡地を整形覆土して,新しいりっぱな環境を作った例も数多く知られている。
採鉱 →採炭
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「露天掘り」の意味・わかりやすい解説

露天掘り
ろてんぼり
open cut mining
open pit mining

地表で鉱石、石炭などの地下資源を採鉱する方法で、鉱床が地表に露出または浅部にある場合に適する。採鉱に付帯する積込みや運搬作業が坑内で行われても、主作業である採掘が露天で行われる場合は露天掘りという。陸(おか)掘り、露天採掘、坑外採掘などともいい、坑内掘り、坑内採掘に対する。

 露天掘りには次のような方法がある。

(1)傾斜面採鉱法 山腹の傾斜面に沿って採掘する方法で傾斜掘りと称され、地形が急傾斜でも緩傾斜でも高度の技術を要せずに採掘しやすいが、絶えず落石や墜落の危険があり、開発当初や小規模採掘の場合以外はあまり用いられない。

(2)グローリホール法 地表にグローリホールglory-holeとよぶ切羽(きりは)と、これに続く立坑(たてこう)と地下施設を備え、立坑を中心としてその周囲を漏斗(ろうと)状に採掘する方法で、地下施設は小割(こわり)室、貯鉱槽、積込み運搬設備などからなり、切羽から立坑を経て落下してくる鉱石を適当な大きさに粉砕して積み出す施設である。この方法も、傾斜面特有の危険性と、降雨時などに立坑詰まりをおこしやすいなどの欠点があり、しだいに行われなくなった。

(3)階段採鉱法 採掘対象物を階段状に採掘する方法で、階段の水平部をベンチ床(ゆか)、垂直部を切羽面、これらを総合してベンチといい、この採掘法をベンチカット法ともいう。海外では以前から行われていたが、安全で能率がよく大量生産に適するなどの長所と大型機械の発達により日本でも広く採用されている。たとえば年産2億トン近い石灰石生産の98%以上がこの方法で採掘されている。

(4)水力採鉱法 高圧水の噴射によって採掘する方法で、砂鉱などの堆積(たいせき)鉱床の採鉱に適している。

(5)浚渫(しゅんせつ)法 河川底または平坦(へいたん)な土地に存在する砂鉱を浚渫船ドレッジャーという)で採鉱する方法。稼行できる深さは30メートルくらいまでである。

 陸上で露天掘りを行う場合は一般に鉱床を覆う表土または不用の岩石層を除去しなければならない。これを剥土(はくど)といい、廃石と鉱石の比である剥土比が低いほど露天掘りの経済性がよくなる。露天掘りは坑内掘りに比して安全性、生産性、経済性などがはるかに優れているが、採掘に伴い粉塵(ふんじん)、水質、騒音などの公害問題をおこすおそれがある。その採掘跡は、環境保全と危険防止のため表土の埋め戻し、植樹による緑化、湖沼の形成などの工事が必要である。これをリクラメーションreclamationといい、最近とくに重要視されるようになった。日本では地質鉱床の関係で大規模に露天掘りができるのは石灰石、ドロマイト、珪石(けいせき)、砕石原料、石材などに限られているが、海外では銅、鉄、石炭、褐炭その他の鉱石が大規模に露天掘りで採掘されている例が少なくない。

[房村信雄]

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百科事典マイペディア 「露天掘り」の意味・わかりやすい解説

露天掘り【ろてんぼり】

地表から掘削していく鉱石,石炭の採掘法。山全体を対象とする石灰岩や,地下浅所にある平板状鉱床などの大規模採掘に適する。階段採掘法と,立坑を掘り地表から掘り進むグローリーホール法がおもな方法で,安全に作業でき,機械化が容易などの利点があるが,作業が天候などに左右され,可採深度にも制約がある。日本では石灰石,ドロマイトのほかは例が少ないが,外国では鉄・銅鉱石,石炭などにも大規模に実施,中国東北地区の撫順(ぶじゅん)炭鉱は特に有名。
→関連項目鉱山採鉱採炭炭鉱

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「露天掘り」の意味・わかりやすい解説

露天掘り
ろてんぼり
open cut (pit) mine

鉱床が地表近くに平板状に存在し,表土を除去しやすい場合に用いられる採掘法。機械の利用が容易で採掘率が高い。坑内掘りに対する。表土を除いて露出した鉱床を階段状に採掘する階段採掘法と,下部の運搬坑道から垂直に鉱床内に竪坑を掘上げ地表に貫通させたのち,この竪坑のまわりから採掘してじょうご形に掘取るグローリー=ホール法などがある。日本の石灰石採掘の大部分は階段採掘法によっている。他の露天掘りは日本ではあまり行われていないが,世界的には中国のフーシュン(撫順)炭鉱,アンシャン(鞍山)鉱山,アメリカのビンガム鉱山,ペルーのトケパラ銅山などが代表的な例である。

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世界大百科事典(旧版)内の露天掘りの言及

【鉱山】より

…また,鉱石は無限に掘り出せるものではなく,出鉱が始まれば鉱床はしだいにその鉱量を失っていくことも忘れてはならない。 鉱床の性質,存在の状態によって鉱山の開発の状況も異なるが,鉱石採取の方法は大きく露天採掘(露天掘り)と抗内採掘(抗内掘り)とに分けることができる。鉱床が地表近くにある場合には,地表から直接に,あるいは地表近くの土石をはぎとったのち,鉱石を順次掘りとっていく露天採掘が行われることが多い。…

【採鉱】より


[露天採掘]
 鉱床が地表に近く存在する場合には,ふつう,その露頭部から,あるいは地表の土石をはぎとって鉱床を露呈させ,鉱石を採掘する。露天掘りと俗にいうことも多いが,この採掘法は作業が単純で機械類の導入も容易であり,能率のよい採掘を行うことができるため広く行われている。とくに,比較的低品位で大規模な鉱床をこの方式で採掘する例が多く,世界の大鉱山といわれるものの大半は露天採掘鉱山といってよい。…

【石炭】より

…また,堆積に適した条件が長く続くと厚い炭層ができ,1枚で数十mの厚さのものも存在する。露天掘りの対象になるのは,おもにこのような炭層である。1枚の炭層の中に,堆積の途中で小規模の土砂流入があり,それが薄い岩石層となって介在している場合も多い。…

※「露天掘り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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