(読み)そろえる

精選版 日本国語大辞典 「揃」の意味・読み・例文・類語

そろ・える そろへる【揃】

〘他ア下一(ハ下一)〙 そろ・ふ 〘他ハ下二〙
① 形や程度、状態などを等しくする。同一にする。一致させる。おなじにする。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
平家(13C前)一二「こゑを調(ソロ)〈高良本ルビ〉へて泣かなしむ」
② 一列に連ねる。整然と並べる。整える。
書紀(720)雄略一四年四月(前田本訓)「饗(あへせ)し時(とき)の如くにして、殿の前に引見(ソロへみたまふ)
太平記(14C後)一四「向の岸高して屏風を立たるが如くなるに、敵鏃(やじり)を汰(ソロヘ)て支候」
③ 前もって用意する。調(ととの)える。備える。
※書紀(720)神武即位前乙卯年三月(熱田本訓)「舟檝を脩(ソロヘ)兵食(かて)を蓄(そなへ)て」
④ 集めて、ある形や組を形成させる。
※平家(13C前)五「よる百人ひる五十人の番衆をそろへて、ひきめをゐさせらるるに」
⑤ 切ることをいう女房詞
[補注]室町時代頃からヤ行にも活用した。→そろゆ(揃)

そろ・う そろふ【揃】

[1] 〘自ワ五(ハ四)〙
① 二つ以上のものの形や程度、状態などが、等しくなる。一致する。同じになる。
※現存六帖(1249‐50頃)「風吹はしとろになひくなよたけのそろはぬふしによをかさねつつ〈平重時〉」
史記抄(1477)一一「口で云た様にはえ不行事があるぞ。言行のそろうが大事なぞ」
② 二つ以上の気持や心が、一つにまとまる。相合う。
※太平記(14C後)一五「人の心調ずして、懸時も泚(ソロハ)ず引時も助けず」
※虎明本狂言・文蔵(室町末‐近世初)「人の心が一つにそろひ」
③ そうあるべきものが全部ととのう。残らずそなわる。集まって一つの形や組をなす。
至花道(1420)皮・肉・骨の事「この芸態に、皮・肉・骨あり。此三、そろふ事なし」
唱歌田植文部省唱歌)(1942)〈井上赳〉「そろた、出そろた、さなへが そろた」
[2] 〘他ハ下二〙 ⇒そろえる(揃)

そろい そろひ【揃】

[1] 〘名〙 (動詞「そろう(揃)」の連用形名詞化)
① 揃うこと。集まるべきものが全部集まること。集まって一つの形や組をなすこと。また、そのもの。
浄瑠璃曾我会稽山(1718)二「梶原平次景高、揃の足がる数十人まっくろにかけ付」
着物などの布地・仕立て・模様がみな同じであること。また、そのもの。そろえ。
浮世草子三島暦(1691)一「おなじくそろひのづきん、羽織はたたんで」
※暴風(1907)〈国木田独歩〉一「それじゃア国ちゃんとお揃(ソロヒ)ね」
[2] 〘接尾〙 (連濁して「ぞろい」とも)
① いくつかで一組になるものを数えるのに用いる。そろえ。「茶器一揃い」
② 名詞に付いて、全体がそればかりで揃っていることを表わす。そろえ。
※茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉奉納「何れも素晴しい名作揃(ゾロ)ひだといふ噂だったが」

そろえ そろへ【揃】

[1] 〘名〙 (動詞「そろえる(揃)」の連用形の名詞化) 揃えること。また、揃えたもの。
※浮世草子・世間胸算用(1692)二「拾貫目入五つ青竹にて揃への大男にさし荷(にな)はせ」
[2] 〘接尾〙 (連濁して「ぞろえ」とも)
① いくつかで一組になるもの、揃ったものを数えるのに用いる。そろい。
※書言字考節用集(1717)九「一切 ヒトソロヘ」
② 名詞に付いて、全体がそればかりで揃っていることを表わす。そろい。
※浮世草子・好色万金丹(1694)一「あまりよいことぞろへの冥加のほども恐ろし」

そろ・ゆ【揃】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「そろふ(揃)」から転じて、室町頃から用いられた語。多くの場合、終止形は「そろゆる」の形をとる) =そろえる(揃)
※伊京集(室町)「勝鋒 ホコヲソロユル」
※古活字本毛詩抄(17C前)二〇「あつものは五味をそろゆる程に」

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