日本大百科全書(ニッポニカ) 「新巻」の意味・わかりやすい解説
新巻
あらまき
サケの塩蔵品の一種。このことばの語源は、室町時代、塩ザケを塩俵の荒莚(あらむしろ)で巻いたところから荒巻の名がつけられ、それがいまでは新巻の字をあてるようになったといわれている。塩引きサケとよばれるものに比べ、薄塩である。シロザケ以外にベニザケ、マスノスケ、マスなどでもつくるが、主体はシロザケであり、年間6万トン弱、主として工船および北海道で製造される。原料サケは工船による沖とりのもの、産卵のため沿岸に寄ってきて定置網に入ったもの、および産卵のため川をさかのぼってきたものを使う。沖とりのものは雌雄とも銀白色をしており、沿岸でとられたものと区別がつく。また、定置網に入ったものは、いくぶん婚姻色を帯びている。川に入ったものはぶちザケになっており、婚姻色が強い。製法は、えら、内臓を除き、腎臓(じんぞう)をかきとる。これを水洗後タンクに入れ、合い塩をし、飽和食塩水を加えて1~2日押し、これを取り出し、えら蓋(ぶた)、腹に食塩を詰め、魚体にも食塩を擦り込む。塩引きサケの食塩量8%に対し、新巻は6%以下のため、冷蔵庫に保管する。工船製のものがもっともうまく、沿岸にきたものもかなりうまいが、川に上ってきたものは色も悪くなり、味は劣る。
[金田尚志]