日本大百科全書(ニッポニカ) 「新生児仮死」の意味・わかりやすい解説
新生児仮死
しんせいじかし
asphyxia of the newborn
出生に際して児(新生児・胎児の両者を含む)の呼吸循環系の確立が順調に行われない状態を意味し、次の2種に分けられる。青色(せいしょく)仮死(仮死1度)は呼吸系の確立が遅れた状態で、全身にチアノーゼが認められる。白色(はくしょく)仮死(仮死2度)はさらに循環系の確立も遅れて全身が蒼白(そうはく)となる、より重症な状態である。
出生を境として児は、子宮内での母体に頼る胎盤呼吸から自立した肺呼吸に変わるばかりでなく、循環や代謝においても子宮内環境から子宮外環境への種々の急激な適応を行わなければならない。したがって、出生はすべての児にとって人生でもっとも死の危険にさらされるときといって過言ではない。仮死に伴う無酸素脳症や頭蓋(とうがい)内出血が脳性小児麻痺(まひ)のもっとも大きな原因の一つであり、すべての児に胎児監視装置などによって仮死なく出生するように努力が払われる時代となった。
[仁志田博司]