日本大百科全書(ニッポニカ) 「旅客運送」の意味・わかりやすい解説
旅客運送
りょかくうんそう
旅客すなわち自然人の運送をなすこと。その法的性質は物品運送と同じく請負契約であり、諾成・不要式の契約である。したがって、請負契約として、運送賃の支払いは、運送の完成を待ってなされるのが原則であるが、実際は前払いの特約があることが多い。また、諾成・不要式契約ではあるが、実際上、乗車券が発行される場合が多い。もとより乗車券は契約成立の要件ではなく、契約成立の時期は場合により具体的に決する。通常は出札口における乗車券の売買によって成立するが、乗車後にこれを買う場合は乗車と同時に成立する。契約の一方の当事者である運送の委託者は通常旅客自身であるが、親が子の運送を委託する場合のように、旅客以外の第三者である場合もある。商法は旅客運送人の責任(旅客および手荷物に対する)を定めている(590条~592条・786条)が、鉄道・軌道・自動車による旅客運送につき、特別法規がある。なお、海外への旅客運送は、豪華船による海上旅客運送から、航空機の発達によりその重点が航空運送に移り、その主流を占めるに至った。旅客死傷損害に対する航空運送人の責任を定めたものとして、国際航空運送条約(ワルソー条約)がある。
[戸田修三]