日本大百科全書(ニッポニカ) 「旅芸人の記録」の意味・わかりやすい解説
旅芸人の記録
たびげいにんのきろく
O Thiassos
ギリシア映画。1975年作品。監督テオ・アンゲロプロス。アンゲロプロスの名を一躍国際的にした作品。旅芸人の一行がギリシア各地を旅して19世紀の牧歌劇「羊飼いのゴルフォ」を上演するという体裁のうちに、時空を超え、彼らの体験した現代ギリシアの政治と歴史が語られていく。舞台となるのはファシスト勢力ファランヘ党が全土を覆っていた1939年から戦争と戦後の内戦を経て、ギリシアがNATO(北大西洋条約機構)に参加し西側へ組み込まれた1952年に至る変転著しい時代である。その一方で、家族を中心としたこの一座は、座長で父のアガメムノン、母クリュタイムネストラ、長女エレクトラ以下、ギリシア神話そのままの人物配置で、神話のエピソードが彼らの運命を定めていく。1975年カンヌ国際映画祭国際批評家大賞受賞。ロングテイクを駆使したスタイルの上映時間4時間に及ぶ大作である。
[出口丈人]