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ギリシア神話の英雄。アトレウスの子で、スパルタの城主メネラオスの兄にあたるミケナイ(ミケーネ)の王。妻クリタイムネストラとの間に、イフィゲネイア、エレクトラほか三女と息子オレステスをもうけた。トロヤ戦争ではギリシア軍の総大将として出陣した。ギリシアの艦隊がアウリスに集合したとき、彼は狩りの技を誇ったので、女神アルテミスは怒って風を止め、彼らの出帆を阻んだ。そこで彼は預言者カルカスの忠告に従い、娘イフィゲネイアを、アルテミスの犠牲に捧(ささ)げた。またトロヤでは、英雄アキレウスから美女ブリセイスを奪ったためにアキレウスが戦場から退き、ギリシア軍が危機に瀕(ひん)したので、彼はブリセイスを返して和解を求めた。トロヤ攻略後、アガメムノンは、トロヤの王女カッサンドラの預言を無視して帰国したため、妻クリタイムネストラとその情夫アイギストスの共謀により暗殺された。これには息子オレステスによる復讐(ふくしゅう)の話がある。総じてアガメムノンは、武勇や知謀よりもむしろ誇り高さと威厳において、他をしのぐ英雄である。この物語は『コエフォロイ』『エウメニデス』とともに古代ギリシア悲劇『オレステイア』の一部を構成している。
[小川正広]
ギリシア伝説のミュケナイ(またはアルゴス)王で,トロイア遠征軍の総大将。アトレウスの子。スパルタ王メネラオス(トロイア王子パリスに誘拐された美女ヘレネの夫)の兄。ヘレネを奪還すべくアウリスに結集したギリシア艦隊の出港時,娘のイフィゲネイアを女神アルテミスへの犠牲に供して,妃クリュタイムネストラの恨みを買った。その10年後,トロイアを陥落せしめ,所期の目的を遂げた彼は,みずからの婢妾としてトロイア王女カッサンドラを伴い,故国に凱旋したが,妃とその情人アイギストスに殺された。彼を主要な登場人物とする文学作品では,トロイア戦争中の彼とギリシア軍最大の英雄アキレウスとの争いを語るホメロスの叙事詩《イーリアス》,エウリピデスの《アウリスのイフィゲネイア》,アガメムノンの殺害とその子女オレステス,エレクトラによる仇討を描いたアイスキュロスの〈オレステイア三部作〉等の悲劇が名高い。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア悲劇。アイスキュロスの作で前458年の上演。トロヤ戦争の総大将アガメムノンの王妃クリュタイムネストラによる殺害を主題とする。王子オレステスの母殺しへと発展するアトレウス一族の悲劇の序篇。
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…その地の王ペラスゴスPelasgosは娘たちを守って追手と戦うか,あるいは娘たちを引き渡して神々の怒りと災いを招くか重大な選択に悩んだ末,民会に諮ってその保護を決断する。〈オレステイア〉(前458)は《アガメムノン》《供養する女たち》《慈みの女神たち》の3編が完全に残っている唯一の三部作である。内容については別項〈オレステイア三部作〉を参照されたい。…
…ギリシアの悲劇詩人アイスキュロスの晩年の作品(前458)で,《アガメムノン》《供養する女たち》《慈みの女神たち》の3編が完全に残っている唯一の三部作。作者は三部作という構成によって,数世代にわたり神と人とがかかわり合う壮大な悲劇の舞台を作り出した。…
…ローマの悲劇でわれわれが今日読むことができるのは,ネロ帝治政下のセネカの作品だけである。彼の残した9編の悲劇はすべて〈クレピダタ劇〉で,《アガメムノンAgamemnon》《ファエドラPhaedra》《メデアMedea》などが有名である。現存する唯一の〈プラエテクスタ劇〉である《オクタウィアOctavia》はセネカ作と伝えられるが,偽作であることがほぼ確実な作品である。…
…赤子のころ,わが子を不死身にしようと願ったテティスによって冥界の川に浸されたが,母親の手がつかんでいたかかと(踵)だけは生身のままに残った(アキレス腱)。成人後,出征すれば早世する運命にあるとの母親の警告をふりきってトロイアに渡り,めざましい働きを示したものの,戦争の10年目に,捕虜の女奴隷をめぐる総大将アガメムノンとの争いがもとで戦闘を放棄,味方を敗北寸前にまで追い込んだ。しかし親友パトロクロスPatroklosの戦死を機に再び武器をとり,敵の総大将ヘクトルを討って友の仇を報じた。…
…テュエステスは復讐を遂げるため神託に従って,実の娘との間にアイギストスAigisthosをもうけた。彼によりアトレウスは殺され,後をその子アガメムノンが継ぎ,弟メネラオスとともにアトレイダイ(アトレウスの胤)と呼ばれる。スパルタ王となったメネラオスの妻ヘレナがトロイアに出奔して端を発したトロイア戦争では,アガメムノンが遠征軍の総大将となった。…
…ギリシア伝説で,ミュケナイ王アガメムノンと妃クリュタイムネストラの娘。アガメムノンを総大将とするトロイア遠征軍がアウリスに結集したとき,女神アルテミスの怒りによって順風が吹かず艦隊は立ち往生したが,女神の怒りを解くにはイフィゲネイアを人身御供にするほかはないと予言者カルカスが説いたため,彼女はアキレウスとの結婚を口実に呼び寄せられ,アイスキュロスの悲劇《アガメムノン》によれば,父親の手で犠牲に供された。…
…物語はギリシアの遠征軍がトロイアを包囲して迎えた10年目の,ある49日間のできごと。アキレウスは全軍の会議の席で王アガメムノンにアポロンの怒りを鎮めるために,その神官の娘を返すよう迫るが,王は代りに彼の愛する捕虜の娘を奪う。この屈辱に怒ったアキレウスは以後の戦闘に加わることを拒み,戦局はギリシア軍に不利になるが,パトロクロスはアキレウスの武具を借りて出撃しヘクトルに討たれる。…
…ギリシア伝説で,ミュケナイ王アガメムノンと妃クリュタイムネストラの子。トロイア戦争から凱旋した父を母とその情人アイギストスAigisthosが謀殺したとき,まだ少年だったオレステスは姉エレクトラの手引きで叔父のフォキス王のもとに逃れ,いとこのピュラデスPyladēsとともに育てられる。…
…こうした共同事業の最大にして英雄時代の掉尾(とうび)を飾るできごとがトロイア戦争であった。ダーダネルス海峡に面する小アジアの都市トロイア(イリオンともいう)の王子パリスがスパルタ王メネラオスの留守に王妃ヘレナをかどわかし自国に連れ帰ったことから,メネラオスの兄ミュケナイ王アガメムノンがギリシアの英雄たちを糾合,大遠征軍をおこす。10年にわたる攻囲戦の後,木馬の計略によってさしものトロイアも落城し,ヘレナは連れ戻された。…
…ギリシア伝説で,ミュケナイ王アガメムノンの妃。クリュタイメストラKlytaimēstraともいう。…
…パリスは美神の指示に従い,スパルタに客となり,王の留守に乗じて財宝とともにヘレネをトロイアに連れ去った。これを知ったメネラオスは,兄であるミュケナイ王アガメムノンと謀り,全ギリシアの英雄をアウリスの港に結集し,遠征の途につく。出航に際しては,エウリピデスが《アウリスのイフィゲネイア》で語るように,総大将アガメムノンがアルテミスの怒りを被り,愛娘を犠牲に供することで,やっと順風を得ることができたり,航海途上で毒蛇にかまれて悪臭を放つ英雄フィロクテテスを,レムノス島に置去りにしたりするエピソードがある。…
※「アガメムノン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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