日本北辺の探険と地図の歴史(読み)にほんほくへんのたんけんとちずのれきし

日本歴史地名大系 の解説

日本北辺の探険と地図の歴史
にほんほくへんのたんけんとちずのれきし

一冊 秋月俊幸著 北海道大学図書刊行会 平成一一年刊

解説 北海道・サハリン島千島列島を含む日本の北辺地域は、一八世紀末頃までの世界地図のなかでは両極地方と並んでもっとも未知の地域であった。一六四三年オランダのフリース航海以後は一四〇年余もこの地方を訪れた西欧の探検船がなかったので、西欧の地理学者たちは彼にならって日本の北方に巨大な「エゾ地」を描いた。その後北方から千島諸島を探検したロシアの探検隊は北海道を発見しなかったので、ロシアではフリースのエゾ地の存在が否定され日本の北方に大きな空白の海域を作った。本書は以上のような日本北辺地図史の特徴を明らかにしたのち、日本では一八世紀末頃幕府によって始められた蝦夷地の経営が北辺における地理的知識を拡大し、地図作製に飛躍的な発展をもたらした過程を地図や文書資料によって明らかにしている。同じ頃欧州でも三大航海者の航海によって日本北辺図に大きな改善があったが、日本では内外の成果を比較研究して、欧州よりもはるかに正確な北辺図が作製されるに至った事情も説明されている。本書の記述は近世末期の地図や明治初年における近代的な三角測量図、地質図海図起源にも及び、全部で一三七枚の地図(ほかに四〇余枚の欄外図)を収録している。附録地図として伊能間宮の蝦夷地沿海実測図の複製が添えられている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、和歌山県串本町の民間発射場「スペースポート紀伊」から打ち上げる。同社は契約から打ち上げまでの期間で世界最短を目指すとし、将来的には...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android