日本大百科全書(ニッポニカ) 「昆虫園」の意味・わかりやすい解説
昆虫園
こんちゅうえん
一般に昆虫の生活を、見てわかるように展示し解説した施設をいうが、昆虫標本の展示を主体とした場合にもこの名を用いることがある。インセクタリウムinsectarium、昆虫館または昆虫生態館ともいう。以前から昆虫についての展示は標本を用いてなされることが多かったが、生理学、生態学、行動学の分野の研究進展につれ、昆虫を理解するには、生態をよく知る必要があることが認識され、昆虫の生態を見せる昆虫園(館)ができた。多くの場合これらは動物園やそれに近い施設内にあり、水族館のように窓枠ごとに違った環境をつくり、昆虫を放してある。
日本では1939年(昭和14)にできた宝塚昆虫館(兵庫県、1967年閉館)で一部を温室形式にし、外からチョウを見せた。1957年(昭和32)豊島園(としまえん)(東京都)で開園したのは水族館方式のものであった(2020年閉館)。ついで1961年に東京都立多摩動物公園にも同様な形式の昆虫園ができたが、ここでは単に季節の昆虫を展示するだけでなく、育成室を設けて温度などを調節し、一年中スズムシなどを飼育して鳴かせたり、季節外にチョウやトンボ、ホタルなどを羽化させることに成功している。また、大温室内をくぎり、植物を植えてチョウを放ち、観覧者が室内で観察できるようにしている。
[中根猛彦]