明治維新物(読み)めいじいしんもの

改訂新版 世界大百科事典 「明治維新物」の意味・わかりやすい解説

明治維新物 (めいじいしんもの)

明治維新前後の史実に取材した歌舞伎新劇などを総称していう。代表作の中でもっとも早く現れたものは,1875年(明治8)東京新富座の河竹黙阿弥作《明治年間東(あずま)日記》で,1868年の上野の彰義隊の戦争を扱い,挿話を交えて8幕に描いた散切(ざんぎり)物。次は1890年5月新富座の竹柴其水(きすい)作《皐月晴上野朝風(さつきばれうえののあさかぜ)》で通称《上野の戦争》。彰義隊の一員を主人公として好評であった。

 新歌舞伎以後の維新物には,高安月郊の出世作《江戸城明渡》(1903年6月東京明治座),岡本綺堂作《維新前後》(1908年9月明治座),山本有三作《同志の人々》(1925年3月東京邦楽座)など数多いが,特に真山青果作《江戸城総攻》《慶喜命乞》《将軍江戸を去る》の三部作はしばしば上演される。新劇または他の演劇で初演されたものでは,池田大伍の《西郷と豚姫》(1917年5月東京有楽座),真山青果の《坂本竜馬》(1928年8月東京帝国劇場)および《颶風(ぐふう)時代》(1935年3月帝国ホテル演芸場),久保栄の《五稜郭血書》(1933年8月東京築地小劇場)などが有名。第2次世界大戦後も大仏次郎の《江戸の夕映》(1953年3月東京歌舞伎座)をはじめ多く作品が上演されている。
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