改訂新版 世界大百科事典 「同志の人々」の意味・わかりやすい解説
同志の人々 (どうしのひとびと)
戯曲。2幕。山本有三作。1923年5月《改造》に発表。25年3月邦楽座初演。配役は是枝万介を6世尾上菊五郎,田中河内介を初世中村吉右衛門,田中磋磨介を6世大谷友右衛門など。幕末,寺田屋騒動を起こした薩摩藩士8名が国許へ護送される船中。薩摩藩は幕府をはばかり,主人に見放された中山大納言の家来田中河内介父子を仲間割れとして斬れと命ずる。激しい論争ののち同志をかばう是枝がみずから討手を引き受ける。船底に幽閉された田中父子に切腹を勧める是枝と,生に執着する若い磋磨介との対立は,息子を介錯したのち腹を切る河内介のみごとな最期によって終結し,深い感動をよびおこす。上下の船室の閉ざされた空間に,極限状況における人間心理を掘り下げて,大正期の近代戯曲の代表作となった。初演の成功以来,すぐれた舞台効果のゆえに歌舞伎から自立演劇まで数多く上演されている。
執筆者:永平 和雄
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