映画フィルム(読み)えいがふぃるむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「映画フィルム」の意味・わかりやすい解説

映画フィルム
えいがふぃるむ

映画フィルムには撮影用と映写用がある。いずれも画面に向って両側または左側にこま送り用パーフォレーション(送り穴)をもつ長尺ロールフィルムで、1889年アメリカの発明王エジソンがのぞき眼鏡式による世界最初の映画「キネトスコープ」を実用化するときに、写真王イーストマンに発注し、劇場用は35ミリメートル幅に統一された。今日のスチル写真用の35ミリフィルムにパーフォレーションがついているのは、映画用フィルムが転用されたためである。映画フィルムの種類は目的によりバラエティに富んでいる。フィルム幅では、ホーム・ムービー用の8ミリメートル、テレビ、教育、自主製作上映など用途が広い16ミリメートル、劇場用映画の標準35ミリメートル、大型映画用70ミリメートル(ポジのみ。ネガは35ミリメートルまたは65ミリメートルを使用)がある。それぞれにカラーとモノクロ、撮影用ネガと映写用ポジがあり、ほかに撮影またはネガ複製用の反転現像フィルム、標準感度と高感度、光学録音用、シネテープとよばれる磁気録音用、特殊目的には赤外線やハイコントラストフィルムなどがある。

 フィルムベースは三酢酸セルロース主流とした遅燃性の安全ベースで、厚さや硬さもいろいろである。フィルム幅およびパーフォレーションの位置は、フィルムを正確に駆動して撮影、焼付け、映写を行うために不可欠のものであるから、厳密に規格化され、パーフォレーションの形状もネガとポジでは違う。

 映画フィルムのメーカーは、アメリカのイーストマン・コダック、日本の富士フイルムの両社が世界市場をほぼ掌握し、アメリカのGAFアンスコ、3M(スリーエム)、ベルギーアグフア・ゲバルトなども映画フィルムを供給している。

 カラー映画の黄金時代を開拓したテクニカラー社のモノクロ・ネガ使用三色分解撮影方式は1950年代末に、また独自の三色捺染(なっせん)式ポジプリント方式も1973年に終了、どちらもイーストマン・コダックのイーストマンカラー使用に転換した。そのためテクニカラー社のハリウッドプラント大部分は解体され、ロンドンのプラントは中国へ売却された。アメリカ映画に用いられているデラックスカラー、MGMカラー(メトロカラー)などの名称は現像所名を冠しており、実態はイーストマンカラー、フジカラー、3Mポジなどと考えてよい。

 映写用ポジプリントフィルムには音を出すための録音帯であるサウンドトラックが搭載されている。35ミリフィルムでは画像と左側パーフォレーションの間に約3ミリメートル幅の帯状アナログ光学サウンドトラック(モノラルまたはドルビーステレオ)が焼き込まれる。1990年代に入って映画音声のデジタル化が進み、35ミリ映画フィルムの規格はそのままに、1本のポジプリントに光学サウンドトラックとあわせ、ドルビー・デジタル、SDDS(Sony Dynamic Digital System)のデジタル・サウンドトラック、およびDTS(Digital Theater System)のCD-ROMコントロールトラックのデジタル3方式が搭載されて、アナログからデジタルまで現行のすべての映画音声に対応するようになった。

[日野康一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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