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光学録音 コウガクロクオン

大辞林 第三版の解説

こうがくろくおん【光学録音】

映画フィルムなどに音の信号を濃淡の変化または黒白の面積の変化で記録する録音方式。光ひかり録音。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

光学録音
こうがくろくおん
optical sound recording

音の信号を光に変えて録音すること、およびその方法。光録音ともいう。広義には、映画フィルムなどのフィルム状媒体、コンパクトディスク(CD)などのディスク状媒体その他を用い、光技術によって録音するものすべてが含まれる。現在では、光学録音は映画フィルムの分野に限定して用いられるのが普通なので、ここでもその慣例に従うこととし、CDなどは別項目とする。[吉川昭吉郎]

サウンド・オン・フィルム方式

初めは無声映画として出発した映画は、まもなく画像に同期した音声をもつトーキー(talkie)に発展する。moving pictureに由来するmovieに対して、talkieなる語はtalking pictureに由来する。
 初期のトーキー映画では、外部に設けたレコードプレーヤーを使ってフィルム上の動画像とレコードの音を同期させるサウンド・オン・ディスク方式と、フィルム上にサウンドトラックをプリントして動画像と音声を同時に再生するサウンド・オン・フィルム方式の2方式が使われた。
 サウンド・オン・ディスク方式には音質において勝るという利点もあったが、動画像と音声の同期が困難で、まもなく淘汰(とうた)されてサウンド・オン・フィルム方式に一本化される。
 サウンド・オン・フィルム方式では、音声を記録するサウンドトラックが、画像とともにフィルム上に設けられる。光学的なサウンドトラックは、映像こま列とフィルム送りのための小穴列(パーフォレーションとよぶ)の間の余白部分を利用して細長い帯状の感光部分を設けたもので、音の情報を感光状態の変化として録音する。映写機の光源から出た光をサウンドトラックに当て、音声に対応する透過光量の変化をホトセル(フォトセル)などの装置で受けて電気信号に変換し、音声増幅器に入力する。
 映写に際して、画像は1こまごとに瞬間的に停止して光源からの光をスクリーンに投影する間歇(かんけつ)動作が必要である。音声再生にはこの間歇動作は不都合で、等速連続走行状態が必要である。このため、フィルム上では画像部分と音声部分それぞれが最適な状態で動作ができるように、位置をずらしてプリントされる。このずれは、フィルムの規格によって異なる。16ミリメートル映画フィルムの場合は、音声が画像26こま分だけ先行している。もちろん上映時にはきちんと同期がとれるようになっている。[吉川昭吉郎]

サウンドトラック

サウンドトラックの音声記録として、濃淡式と可変面積式(面積式と略称することもある)の二つの方法がある。
 濃淡式は、音を濃淡状に変化する模様として記録する(外見上のイメージとしては、バーコードのような模様を想定するとわかりやすい)。歴史的にはこの濃淡式のほうが古く、1926年にはフォノフィルムという濃淡式サウンドトラックを使った30分もののオールトーキー・メロドラマ映画『レトリビューション』Retributionが公開されている。本格的な商業システムはアメリカのウェスタン・エレクトリック社(現、アルカテル・ルーセント社)によって開発され、1927年ごろには、ハリウッドの主要な映画会社によって採用されている。濃淡式には、フィルムの露光や現像技術によって濃淡状態が左右され、最良の濃淡状態を得るには細心の注意が必要であること、コピープリントを起こした場合、状態が変わってひずみや雑音が増えることがあるなど、フィルム管理がむずかしい欠点がある。そのため、すこし遅れて可変面積式が開発されると、これにとってかわられるようになった。
 可変面積式は、音の変化をサウンドトラックの透明部分と遮光部分の面積比の変化として記録する(外見上のイメージは、連続して変化する山並み状の模様を想定するとわかりやすい)。アメリカのウェスティングハウス社とゼネラル・エレクトリック社が開発し、RCA社が引き継いで1928年にRCAフォトフォンの名で商用化したものである。この方法は、模様の状態が透明と遮光の2種類だけで構成され中間調がないため、現像技術によって状態が左右されることが少なく、またプリントを繰り返してもひずみが増えたりしないなど、フィルム管理が容易であるという利点がある。このため、先行した濃淡式にかわってサウンドトラックの主流となっていった。
 映画音声がステレオになると、2本のサウンドトラックを設けて左右チャンネルの録音に対応した。マルチチャンネル化には、2本を超えるサウンドトラックを設けることはせず、マルチチャンネル音声をマトリックス方式によって2チャンネルに振り分けて録音し、再生時に出力をもとのマルチチャンネルに戻すという方法を採用した。
 なお、光学式サウンドトラックより遅れて磁気式サウンドトラックが開発され、16ミリメートルや8ミリメートルフィルムで使われたが、業務用の35ミリメートル映画では、ほとんど使われない。[吉川昭吉郎]

デジタル方式サウンドトラック

アナログ方式のサウンドトラックでは、音の周波数帯域・ダイナミックレンジともに狭く、将来の主流と考えられるマルチチャンネルへの対応もディスクリート(独立)マルチではなくマトリックス方式という不完全なものであったため、これらの欠陥を抜本的に改善できるデジタル方式が登場する。
 上映された映画で初めてデジタル録音が使われたのは1990年、CDS(Cinema Digital Sound)とよばれる方式である。この方式は実用性に問題があって続かず、その後出現したドルビー・デジタル(1992)、SDDS(1993)、DTS(1993)などが主流となった。いずれも音の情報を圧縮して効率よく録音することで、フィルムの限られた余白部分を使いながら安定した録音ができ、さらにマルチチャンネル・サラウンド(多チャンネル音声)の迫力ある録音ができるようになっている。どのデジタル録音方式でも、バックアップのためのアナログ録音トラックが併用され、デジタル系統に故障が生じてもただちにアナログ系統に切り替えが行われて、上映に支障が出ないようになっている。
(1)ドルビー・デジタル(Dolby Digital) フィルムを送るためのスプロケットとよばれる穴と穴の間を利用してデジタル信号を記録するもので、AC-3という圧縮方式を用いて、5.1チャンネル(音響システムの構成の一つ。通常は、聴者の左前・右前・センター・左後ろ・右後ろ、およびセンター重低音強調効果チャンネルのように配置される)までのディスクリート・マルチチャンネル・サラウンド音声を録音することが可能である。
(2)SDDS(Sony Dynamic Digital Sound) アナログ・サウンドトラックが利用した残りのごく少ないスペースを利用し、さらにスプロケットの外側の余白部分まで利用するもので、ATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)という圧縮方式を用いて、最大8チャンネルまでのディスクリート・マルチチャンネル・サラウンド音声を録音することが可能である。
(3)DTS(Digital Theater Systems) フィルム上には同期信号だけを記録し、デジタル音声は外部に設けられたCD-ROMシステムなどを用いて、フィルムと同期して録音・再生を行う。5.1チャンネルまたは6.1チャンネル(5.1チャンネルに後ろセンターを加えた構成)のディスクリート・マルチチャンネル・サラウンド音声を基本とする。
 DTSにみられるように、デジタル時代になって、サウンドトラックは直接音声を記録するもののほかに、外部の録音・再生装置との連携のための同期信号を記録することなどにも使われるようになったため、現在ではこれらすべてを含めてサウンドトラックとよぶようになっている。[吉川昭吉郎]

光学録音の現状と今後

現在、映画上映システムがデジタル・シネマ・プロジェクターに移行し、大型映画館やシネマ・コンプレックス(複合映画館、シネコン)などの商業施設ではフィルム映写機を使う上映が激減している。サウンド・オン・フィルム発祥時のアナログ・サウンドトラックから、1990年以降のデジタル・サウンドトラックまで、時代とともに長足の進歩を遂げ、映画音声の主役であった光学録音も、映画システムの交替とともに主役の座を降りようとしている。しかし、映画文化に果たしたその貢献は大きく、今後も貴重な映画アーカイブズの保存・再生において、大きな役割を担い続けるものと思われる。[吉川昭吉郎]

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の光学録音の言及

【録音】より

…音楽産業は主として後者によって成立している。 現在実用されている録音の方法は,磁気録音,円盤録音,光学録音の三つに大別される。(1)磁気録音 一般の録音機に用いられているようにテープの走行方向に磁化を与える長手方向磁化longitudinal magnetizationと,磁気テープの長さ方向と厚み方向に垂直な方向に磁化を行う幅方向磁化transverse magnetizationがある。…

※「光学録音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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