国指定史跡ガイド 「智頭往来志戸坂峠越」の解説
ちづおうらいしとさかとうげごえ【智頭往来志戸坂峠越】
鳥取県八頭(やづ)郡智頭町駒帰にある峠。智頭往来の歴史は古く、平安時代にはすでに、美作(みまさか)国境の志戸坂峠を越えて、因幡(いなば)地方と畿内(きない)を結ぶ重要な街道として利用されていた。近世では、鳥取池田藩の参勤交代道となり、初代藩主池田光仲が1648年(慶安1)に入国してから1862年(文久2)までの214年間に、智頭往来経由で178回参勤交代をしている。藩によって一里塚や宿駅が整えられ、維持されていた。智頭町内の街道沿いには、往来安全を願う大日如来や地蔵をはじめ、石造物も数多く残されており、庶民や物も往来する主要道であったことがうかがえる。自然や歴史に恵まれ、昔の面影を今に伝える智頭往来は、現在も農林業や生活道路として使用されており、わが国の交通史を考えるうえでも重要である。地元の大切な歴史資産として、地元住民を中心に道の補修や案内板や東屋の設置など維持管理や保存活動が行われ、志戸坂峠を中心とした約2.5kmが2008年(平成20)に国の史跡に指定された。智頭往来へは、JR因美線ほか智頭駅から徒歩約15分。