改訂新版 世界大百科事典 「曳山狂言」の意味・わかりやすい解説
曳山狂言 (ひきやまきょうげん)
曳山で演じられる歌舞伎をいう。曳山は祭礼などで曳きまわされる飾り物を仕立てた山車(だし)で,移動式の歌舞伎舞台となり,この上で芝居が演じられる。栃木県那須烏山市の旧烏山町八雲神社の〈山揚祭(やまあげまつり)〉(7月25~27日)の曳山狂言が有名で,町内の道路約100mに踊り台をはじめ,花道,橋波,館などの山を作り,踊り台で《将門》《戻橋》《紅葉狩》などが演じられる。百数十人の若衆が奉仕する。滋賀県長浜市の長浜八幡の祭り(4月13~15日)では,10歳前後の少年によって〈長浜曳山芝居〉が行われ,《信州川中島》《蝶千鳥曾我物語》などが演じられる。これを模して始められたという石川県小松市の〈小松曳山子供歌舞伎〉は,5月13~16日の日吉,菟橋(うばし)の両神社の祭りに行われる。組立て式の豪華な曳山で,10歳前後の少女(古くは男児)が中心になり,《奥州安達原三段目》《御所桜堀川夜討三段目》などが演じられる。
執筆者:中村 茂子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報