月借銭(読み)げっしゃくせん

改訂新版 世界大百科事典 「月借銭」の意味・わかりやすい解説

月借銭 (げっしゃくせん)

8~9世紀に中央の官司で行われていた銭貨を貸し付けて行う高利貸一種。銭を貸し付けるのは出挙(すいこ)銭と呼ばれていたが,月借銭はその一種で,各官司が月単位に銭を官人に貸し付け1.3~1.5割の利子をとることになっていた。中央の官人といっても下級官人は五位以上の貴族季禄を支給される職事官とちがい,京での収入は月々あたえられる食料と臨時に支給される禄以外にはなかったから,いきおい生活は苦しく,このような月借銭にしばしば手をそめたらしい。担保は多くの場合,官人の家地や口分田であり,造東大寺司などの寺院の中では翌月支給される布施料をあてる場合もあった。8世紀も後半になると,調庸の未進も大きくなり,平城京内の経済は混乱し,物価が高騰した。この結果官司の行う出挙銭や月借銭も官人の生活が苦しくなるにつれて増加し,京内の宅地を失う官人も多くなった。
出挙
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の月借銭の言及

【利子】より

…このような定式化は,今日の新古典派経済学などにある程度の影響を及ぼしている。【堀内 昭義】
【歴史】

[日本]
 (1)古代 古代では一般に利,息利と表すが,出挙(すいこ)や月借銭(げつしやくせん)によるものが知られる。令の規定では稲粟出挙は利息は私出挙が1倍,公出挙は半倍を超えることは許されず,期間は1年とし,1年目の利息がすでについている元本に翌年以降利息をつけることや複利計算は禁止されていた。…

※「月借銭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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