日本古代の律令官人の基本的な給与制度の一つ。同系列の給与に宮人の禄,皇親の時服がある。支給される範囲は在京の官人で正一位から少初位に至る官位に相当する長上官(常勤の官職)に任用されている者と,その他の長上官の一部(内舎人,兵衛,別勅才伎)を対象とした。在京の官人以外では大宰府官人および壱岐・対馬の嶋司が対象となり,また薩摩国司に支給した例もある。支給される資格はその年の8月から翌年正月まで(ないしは2月から9月まで)のおのおの半年間に120日以上出勤することを条件とし,春夏の禄は2月,秋冬の禄は8月に支給された。またひとりで多くの官職を併任している場合にはその季禄の最も多い官職の分を支給することとした。支給される品物は絁(あしぎぬ),綿(真綿),布(麻布),鍬でいずれも調庸による収取にもとづくものである。この季禄の制度は唐の京官に対する禄の制度にならったものらしいが,唐の武徳令では粟を品位ごとに支給するもので,これは唐の租税が米粟を中心に収取されたことに対応している。日本の季禄は8世紀末から調庸の未進(みしん)が多くなるにしたがって,しだいに支給が困難となった。914年(延喜14)の三善清行の〈意見十二箇条〉では,一般の官人には5,6年に一度しか支給されなくなっていると記されている。
→位禄
執筆者:鬼頭 清明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令(りつりょう)制における俸禄の一種。養老(ようろう)令の禄令の規定によれば、在京の文武の職事官(しきじかん)(官位令に官位相当が定められている、諸官庁の四等官クラスのポストについている者)および大宰府(だざいふ)・壱岐(いき)・対馬(つしま)の職事官に対して、その在任するポストの相当位に応じて支給された。1年を二分し、春・夏の禄は2月上旬に、秋・冬の禄は8月上旬にそれぞれ給されるが、支給される月以前の半年間の出勤日数が120日に達しない場合には支給されない。禄物の内容は絁(あしぎぬ)・綿・布・鍬(くわ)であるが、春・夏の禄では綿にかえて糸が、秋・冬の禄には鍬にかえて鉄が支給された。これらの季禄の財源は、大蔵省に納められる諸国よりの調庸物をもって充当した。
[吉岡眞之]
『高橋崇著『律令官人給与制の研究』(1970・吉川弘文館)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
律令制下の給与の一つ。おもに在京の職事(しきじ)官が対象。大宝・養老禄令によれば,在京の文武職事官と大宰府・壱岐・対馬の職事官に対し,半年間(8月~翌年1月,2~7月)の勤務日数(上日)が120日以上ならば,帯官の相当位に応じ,2月に絁・糸・布・鍬からなる春夏季禄を支給した。同様に8月には秋冬季禄(糸・鍬は綿・鉄にかえる)を支給した。数官を兼ねた場合は相当位の高い官に従い,初任官の場合は規定の上日をみたす必要はなかった。家令(かれい)職員は相当位より1等降された。相当位のない内舎人(うどねり)・別勅長上・才伎長上・兵衛・授刀舎人,後宮に仕える宮人には,別の規定によって季禄を支給した。
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…そして官司機構に参加する女性たちの総称である宮人(くにん)のうち,後宮の十二女司の主要な職員である掌(しよう)以上は〈職事〉とされ,そのほかの宮人たちをさす散事(さんじ)と区別された。その在京の文武職事および大宰府,壱岐・対馬嶋の職事官は,半年ごとに120日以上出勤すると,それぞれの官位によって季禄(きろく),つまり春夏禄・秋冬禄をあたえられた。また宮人の職事は,尚蔵は正三位に准じ,典書・典酒は従八位に准ずるなど,季禄を支給する准位が規定されていたが,その准位には変遷があった。…
※「季禄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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