日本大百科全書(ニッポニカ) 「有機的連帯」の意味・わかりやすい解説
有機的連帯
ゆうきてきれんたい
solidarité organique フランス語
デュルケームが用いた社会類型の一つで、機械的連帯に対応する。後者は類似した諸個人が圧倒的な集合意識のもとで没個性的な社会結合で結ばれているのに対して、有機的連帯は個性的な異質の諸個人が特定の関係で結ばれる社会結合である。それは、分業に基づく異質の諸個人の機能的差異が織り成す連帯から成り立つ組織的社会であって、集合意識が弱体化し、個人意識が優越する近代社会がモデルである。ここでは集合意識と個人意識の隔たりがますます大きくなり、個人の自律性は大きくなるが、反面、社会と個人の乖離(かいり)が生じてアノミーを生む一因となる。そこから、近代において新しい集合意識を再建することがデュルケームの実践的課題であった。さらに、有機的連帯は機械的連帯の解体ののちに生じ、後者から前者へというのが彼の社会変動の歴史的見通しであった。
[田原音和]
『E・デュルケーム著、田原音和訳『社会分業論』(1971・青木書店)』