機械的連帯
きかいてきれんたい
solidarité mécanique フランス語
フランスの社会学者デュルケームが用いた社会結合の一類型。諸個人が相互に類似している程度に応じて結合の強さが決定されるような社会で、「類似による連帯」ともよばれる。ここでは集合意識が個人意識を圧倒し、諸個人はその個性を発揮することなく、無機物の分子のように結合しあっているので機械的連帯という。そのような類似者のつくる諸集団が構成する社会は、あたかも環虫類が同質的な諸環節からなっているのに似ているから環節的社会とよばれる。未開社会のホルドhordeがその典型であり、その集合意識の強さを示すものとして、刑法による抑圧的制裁が優越する社会である。彼は、この原形質ともいうべき社会から個性的な機能が分化して分業を生じ、機械的連帯にかわって有機的連帯の社会に移行するという進化主義的な社会変動論を想定した。
[田原音和]
『E・デュルケーム著、田原音和訳『社会分業論』(1971・青木書店)』
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機械的連帯
きかいてきれんたい
E.デュルケムが『社会分業論』などで定式化した概念。人々が同質的でそれぞれが没個性的な活動しかしないことによって存立する社会諸関係の様式をいう。一方,人々が個性的な異質の諸個人として,分業による相互依存によって有機的な全体を生み出す社会諸関係の様式を有機的連帯と呼ぶ。
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世界大百科事典(旧版)内の機械的連帯の言及
【社会的連帯】より
…相互に結びついている形態や結びつきの深さ,結びつきを左右する動機や根拠とその確定の程度,その結びつきの媒体となる紐帯およびその紐帯の強さには,いくつもの種類とさまざまな度合がある。社会学者のデュルケームは《[社会分業論]》(1893)のなかで社会の進化を論じ,社会生活において諸個人および諸集団が相互に依存しあう結びつきの全体的な特徴を〈機械的連帯〉と〈有機的連帯〉とに分けた。前者は,分業の未発達な段階で互いに類似した同質的な――その意味でさながら機械の部品のように取りかえやすい性質をもった――成員が相対的に閉じた空間内で結合しあう共同状態を指す。…
【社会分業論】より
…それは社会の諸単位が異質化しつつ相互依存性を深めていくことを意味するわけで,そこに新たな連帯,〈有機的連帯〉がつくり出されていく。これは分業の未発達な社会における同質的な諸単位の連帯,〈機械的連帯〉と対照的な性格をもつものである。このように分業の発達と[社会的連帯]の型の変遷との関連を考察したところに,本書の意義がある。…
【分業】より
…異質性ゆえのこの相互依存関係こそが,社会的分業の最も重要な特性である。デュルケームは《社会分業論》の中で,同質性に由来する連帯を〈機械的連帯〉,異質性に由来する連帯を〈有機的連帯〉と呼んで,近代産業社会の中心原理が後者にあることを洞察した。
[機能]
社会的分業が発達することの機能は,なによりもまず仕事の専門化を通じての高い効率,したがって社会全体としての高い生産力の実現というところに求められる。…
※「機械的連帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」