改訂新版 世界大百科事典 「東厰」の意味・わかりやすい解説
東厰 (とうしょう)
dōng chǎng
中国,明代の宦官(かんがん)が諜報と刑獄をつかさどった特務機関。永楽帝は靖難の変に際して功のあった建文帝側近の宦官を,1409年(永楽7)以来,密偵として重用していたが,20年には北京に東厰を設け,宦官をその長官とし,同じく諜報・刑獄の機関である錦衣衛とともに皇帝に直属させ,世に〈厰衛〉と併称された。東厰ははじめ一般官吏の不正・謀反などを内偵するのを主な任務としていたが,のちにはその範囲が民間にまで広がり,北京のみならず全国に及んだ。成化年間(1465-87)に汪直が勢力を得ると別に西厰が設けられ,汪直の死とともに廃止されたのを,正徳年間(1506-21)に劉瑾が復興し,さらに劉瑾は内行厰を設けたが,かれの死とともに西厰,内行厰ともに廃止された。万暦の初め馮保によってまた内厰が設けられ,東厰を外厰と改めたこともあるが,結局東厰のみが永続して明末に及び,恐怖と怨嗟の的となった。東厰は宦官勢力の一大拠点であったといえる。
執筆者:谷 光隆
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