松屋会記(読み)まつやかいき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「松屋会記」の意味・わかりやすい解説

松屋会記
まつやかいき

現存する最古茶会記奈良の塗師(ぬし)で松屋三名物(松屋肩衝(かたつき)、徐煕(じょき)筆鷺絵(さぎのえ)、存星盆(ぞんせいぼん))を所持した松屋家の久政(ひさまさ)、久好(ひさよし)、久重(ひさしげ)3代にわたる他会記の集成書。現存する流布本(るふぼん)は江戸中期の転写本であり、書名原書のままとはいえず、原型を正しく伝えてはいない。構成は、1533年(天文2)~96年(慶長1)の久政他会記、1586年(天正14)~1626年(寛永3)の久好他会記、1604年(慶長9)~50年(慶安3)の久重他会記からなる膨大な茶会記録が収められており、茶道成立期のようすを知るうえでもっとも貴重な資料の一つとなっている。

[筒井紘一]

『千宗室監修『茶道古典全集 第9巻』(1957・淡交社)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「松屋会記」の解説

松屋会記
まつやかいき

「松屋日記」「松屋筆記」とも。安土桃山・江戸初期の茶会記。3巻。奈良の豪商漆屋の松屋源三郎久政(ひさまさ)・久好・久重の3代,約120年間に及ぶ茶会のようすを記す。茶道の全盛期記述で,とくに1587年(天正15)の北野大茶湯の記事,唐物中心から和風への変化,千利休の茶,各時代の茶人の活躍などが知られる貴重な史料。「茶道古典全書」所収

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の松屋会記の言及

【茶事】より


[茶事の記録]
 茶事の記録を茶会記,また単に会記と称する。四大茶会記として,堺の天王寺屋3代(津田宗達・宗及・宗凡)にわたる《天王寺屋会記》(1548‐90),奈良の漆問屋松屋源三郎家の3代(松屋久政・久好・久重)の断続する《松屋会記》(1534‐1650),今井宗久による1554‐89年の自他の茶会計83会を記した《今井宗久茶湯日記書抜》および博多の富商神屋宗湛の《宗湛日記》(1586‐1613)が,利休を中心とする茶の湯全盛時の茶事の内容を詳細に伝えている。近世に入ると,近衛家熙の行状を記した山科道安の《槐記》が出色であり,その他無数の茶会記録が伝存している。…

※「松屋会記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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