正月用の飾松を切りに行くこと。12月13日に行く所が多くこの日を正月の準備開始の日としていたが,すす払いなどと同じように今では遅くなっている。資源保護の立場からすでにやめてしまった所も少なくない。このときだけはどこの山へ入ってもとがめられないというが,家の屋根が見えないくらい遠くのがよいとか,家より低い地のは嫌うなどともいう。厳重にする所では,松に神酒を注ぎ洗米を供えて,かしわ手を打ち,唱え言をするなどの一定の作法に従って切ってくる。新わらの負い縄などで迎えてきたあとは,立てる日まで清浄な場所を選んで置いておく。このように丁重な扱いをしたり,お松様迎え,お正月様迎えなどと敬語で呼んだり,正月には松に供え物をする例の少なくないことから,この松は年神の依代(よりしろ)としての機能を持つものだと考えられている。なお,松ではなくサカキやホオノキ,ヒノキなどを迎える所もある。松をはずすのは正月4日,7日などさまざまであるが,小正月までにははずして,トンド(左義長)の火で燃やす地方が多い。
→門松 →松の内
執筆者:田中 宣一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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