正月の松飾をしておく期間内のこと。門松や年棚の松は年神の依代(よりしろ)と考えられるから,松飾のある間は正月の年神祭が続いていると理解することができる。その期間は土地によって必ずしも一定せず,元旦から3日まで,あるいは7日,15日前後までとする所などがあるが,一般に松の内は短くなる傾向にある。しかし,4日朝の僧侶による寺年始までには門松をとってしまうべきだとする所でも,屋内の神棚の松飾や注連(しめ)飾をはずすのはそれより後だとする所が少なくないし,また3日など比較的早い時期に門松をとる所では,その穴の跡に門松の芯の小枝をとって少し挿しておく所が珍しくないことから,3日などではなく,7日もしくはそれよりも長い期間が本来の松の内ではなかったかと思われる。取りはずした松の処理は,小正月のトンド(左義長)の火で燃やす所が多いが,正月11日などの鍬入れ儀礼(仕事始め)のときに田畑へ持っていって立てる例もある。
執筆者:田中 宣一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
正月の門松(かどまつ)の立っている期間。門松は、年神の依代(よりしろ)であるから、年神が家々に滞在する期間であり、狭い意味での正月である。門松を取り払う日は各地各様で、したがって松の内も一定しない。普通、元日から七日正月までをいうが、七草(ななくさ)を大(おお)正月に含めて8日までとする地方があり、逆に6日までとする例もある。京都や大阪では15日までであるが、小(こ)正月の若木迎えが早く薄れたために、大正月から一連のものと考えたためであろう。松飾りを焼く「とんど」も、7日前後と15日前後にある。門松を取り払ったあと、門松の先を切って門松を立てていた杭(くい)の穴に刺し、門松の元服などとよんでいる例が多い。
[井之口章次]
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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