敬語(読み)ケイゴ

デジタル大辞泉 「敬語」の意味・読み・例文・類語

けい‐ご【敬語】

話し手または書き手が相手や話題の人物に対して敬意を表す言語表現。日本語では敬意の表し方によって、ふつう、尊敬語謙譲語丁寧語の3種に分けられる。敬譲語。→尊敬語謙譲語丁寧語待遇表現
[補説]「敬語の指針」(平成19年2月文化審議会答申)では、敬語の働きと適切な使い方をより深く理解することを目的として、従来の3種類に対し、尊敬語謙譲語Ⅰ謙譲語Ⅱ丁重語)、丁寧語美化語の5種類に分けて解説している。

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精選版 日本国語大辞典 「敬語」の意味・読み・例文・類語

けい‐ご【敬語】

  1. 〘 名詞 〙 相手や話中の人物に対する敬意を表わす言語的表現。日本語では、相手や話中の人自身、およびその人に属する物や行為を敬う意味で用いるもの(尊敬語)、相手や話中の他人に対し、謙遜(けんそん)する意味で自分および自分がわの物・行為について用いるもの(謙譲語)、相手に対する直接の敬意から話し方を選ぶもの(丁寧語)が含まれる。形式としては、敬意を含んだ特別の単語を用いたり(君・のたまう・おぼす)、語頭、語尾、あるいはその双方に、敬意を表わすための一定の接辞・助動詞を添えたり(お顔・手前ども・お書きになる・読みました)する。また、尊敬語だけを特にいう場合もあり、相手との相対的な身分や年齢によって変わる待遇表現を広く含めていう場合もある。
    1. [初出の実例]「臣民の敬語(ケイゴ)も方今の様には恭々しからず」(出典:春迺屋漫筆(1891)〈坪内逍遙〉政界叢話)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「敬語」の意味・わかりやすい解説

敬語
けいご

話し手(書き手)が聞き手(読み手)あるいは話題の人物に対する敬意に基づいて用いる特定の言語形式をいう。たとえば、「Aさんがなさるそうです。」は、「Aがするそうだ。」を敬語の言い方にしたものであるが、前者は、話し手が話題の人物Aに対する敬意に基づいて「Aさん」といい、「なさる」という言い方をする一方、聞き手に対しても「そうだ」のかわりに「そうです」を用いることにより敬意を表していることになる。このように敬語は、敬語でない語に対応する別の言語形式であるところにその基本的性格がある。ただし同じ言い換えでも、一方に「Aの野郎もしやがるそうだ。」のような言い方もあり、要するに日本語では、人をどのように待遇するかによって言語形式が変わるので、これを言語待遇または待遇表現とよぶ。敬語を広い意味に解する場合は、これらと同義語として用いられることもあり、近年そうした傾向もみられるが、普通は最初に述べたように敬意に基づく表現をさす。敬語は日本語のほか朝鮮語チベット語ジャワ語などに著しいが、欧米語には少ないといわれる。しかし英語のWill you ~ ?に対するWould you ~ ?の形、ドイツ語やフランス語のduやtu(ともに「おまえ」に相当)に対するSieやvous(ともに「あなた」に相当)など、敬語的表現がないわけではない。

[辻村敏樹]

敬語の種類

敬語は、もっとも一般的には、(1)相手や第三者の動作・状態・所属物などを高めていう尊敬語(「おっしゃる」「くださる」「お美しい」「ご住所」など)、(2)自分または自分側の者の動作・状態・所属物などを低めていう謙譲語(「申し上げる」「いただく」「拙宅」など)、(3)相手・自分に関係なく物言いを丁寧にする丁寧語(「お天気」「ご飯」「です」「ます」など)の三つに分けられる。しかし、丁寧語のうち「です」や「ます」は相手に対し直接敬意を表す語なので、これを対者敬語とよんで、ほかの丁寧語や尊敬語・謙譲語のように表現素材(話題の人物や事物・事柄)について用いられる敬語(素材敬語)と大きく区別することもできる。その場合、丁寧語という名称は「です」や「ます」に限って、「お天気」や「ご飯」の類は、素材を美化する表現として美化語などとよぶのが適当であろう。そのほか、敬意の対象によって「為手(して)尊敬」「受け手尊敬」「聞き手尊敬」「自己卑下」の各敬語を設ける説、「参る」や「致す」の類を話し手の品位を保つとともに、聞き手に対する敬意を表すものとして「丁重語」という一類をたてる説などいろいろある。

[辻村敏樹]

敬語の語構成

敬語は、構成上からみると、(1)特定語形を用いるもの(「おっしゃる」「なさる」「くださる」など)、(2)普通の語に敬語的成分を付加するもの(イ. 前接「顔」「本」など、ロ. 後接「息子さん」「行かれる」など、前後接「医者」「研究なる」など)の二つがある。ただし、(1)(2)の両方を用いて「お見えになる」「お伺いする」などの形にすることもある。

[辻村敏樹]

敬語表現の手順と対人関係

敬語の使用にあたっては、話し手、聞き手、話題の人物それぞれの関係に応じて、上記各種のことば使い分けたり、組み合わせたりする必要があるが、動作の表現では、原則として、(1)話題の人物相互の関係による敬語、(2)話し手と話題の人物の関係による敬語、(3)話し手と聞き手の関係による敬語の順、たとえば、
  「AさんがBさんに本を(1)さしあげ(2)られ(3)ます。」
のように表現される。このことは、逆に、敬語表現の型から人と人との関係を探りうることを示す。

[辻村敏樹]

敬語と敬語意識

敬語は、もと人力を超えた存在(神)に対する敬避の表現に発したものと思われ、古くは文字どおり敬いの気持ちを表すものが中心であった。しかし今日では、そういう意識で用いられることもないではないが、対人関係における上下・親疎などの認識に基づくものがその基調となっている。すなわち、(1)上下関係の認識によるもの(上役・年上・先輩などに対する敬語)、(2)親疎関係の認識によるもの(初対面の人や面識の薄い人に対する敬語)、(3)恩恵的関係の認識によるもの(商人の客に対する敬語や、患者の医者に対する敬語など)、(4)優劣関係によるもの(役人・代議士などに対する敬語)、(5)公的立場の認識によるもの(放送・講演などの際の敬語)などいろいろある。そのほか、自己の品位を保とうとの意識から用いる場合や、親愛・諧謔(かいぎゃく)の意の表現のため自分自身に用いる場合もある。

[辻村敏樹]

現代敬語の傾向

現代敬語の傾向としては、(1)美化語や対者敬語への傾斜、(2)特定語形の衰退、(3)相対的用法の拡大などがあげられる。(1)や(2)は敬語簡素化の方向としてとらえられるが、とくに(1)の原因としては、人を上下関係にかかわりなくみようとする現代社会の一般的風潮をあげることができよう。なぜなら、尊敬語や謙譲語は、本来、上下関係を反映するものとしてできたものであるのに対し、美化語や対者敬語はそういう性格のものではなく、自己の品位を保つとか、聞き手のみへの敬意を示すといったものとなっているからである。また、相対的用法とは、相手によって敬語の使い方を変えることで、これは、古く神や天皇が上位者としての意識のもとに、自分自身に敬語を用いた絶対的用法(類例は近世の大名などにもある)と対照的なものといえる。なお、絶対的用法から相対的用法へというのが敬語の一つの流れであるが、現代では自分の身内はもちろん、勤務先の上司のことを外部の人に話すにも、自身のことをいう場合と同様な話し方をする傾向が広まりつつあり、これは上述の流れのなかの現象としてとらえることができる。

[辻村敏樹]

『時枝誠記著『国語学原論』「第5章 敬語論」(1941・岩波書店)』『金田一京助著『日本の敬語』(1959・角川書店)』『辻村敏樹著『現代の敬語』(1967・共文社)』『辻村敏樹著『敬語の史的研究』(1968・東京堂出版)』『辻村敏樹編『敬語史』(1971・大修館書店)』『宮地裕著『文論』「敬語論」(1971・明治書院)』『林四郎・南不二男編『敬語講座』全10巻(1973~74・明治書院)』『大野晋・柴田武編『岩波講座 日本語4 敬語』(1977・岩波書店)』『宮地裕編『敬語史』(1981・明治書院)』『国立国語研究所編『企業の中の敬語』(1982・三省堂)』『国立国語研究所著『敬語と敬語意識――岡崎における20年前との比較』(1983・三省堂)』『桜井光昭著『敬語論集――古代と現代』(1983・明治書院)』『大石初太郎著『現代敬語研究』(1983・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「敬語」の意味・わかりやすい解説

敬語 (けいご)

〈彼が食う〉と〈あの方が召し上がる〉,〈雨が降った〉と〈雨が降りました〉のように客観的には同一の内容をもちながら異なった表現があり,その内容に現れる人(登場者)またその表現行為に関与する人(話し手自身・相手)の間の優劣関係を意識することによって一方が選択されるとき,その表現を敬語というが,日本語においてとくにいちじるしく認められる表現法である。敬意の表現だけでなく,逆に相手を見下げる気持の表現を含めて,大きく〈待遇表現〉の名で一括することもあるが,標準としての言語,とくに教育の面では卑下し悪口する表現が取り上げられることは少ない。敬語は,ときにはわざとあざけりのために不当に用いられることはあるが,本来の地盤は敬意である。敬意は,優越者・支配者の優越を是認しその支配を積極的に受け入れる態度にもとづいており,被支配の感情である。その優越関係が一つの地位また階級について固定した用語で表される場合には絶対敬語といわれる。皇室敬語や〈陛下〉〈殿下〉〈閣下〉〈殿〉の使い分けなどはその例で,これは制度によって敬意が強要されたのである。社会体制の変化に応じて,敬意の内容も変化する。上級者に対する被支配感情が薄れたり,単に自己の立場を弱めることによって相手の好感を求めたりすると,社交用語の性格が強まる。〈ます〉〈です〉の類が室町末以来しきりに用いられるようになったのも,都会生活の発展と関係がある。

人と人との敬意にもとづく関係には,2種類ある。第1種は,登場者に対する話し手自身の敬意であるが,その表現には,被敬者自体,被敬者を主体とする行為・作用・所有物等について被敬者を高める方向のもの(尊敬語--たとえば,仏さま,おっしゃる,お聞きになる,令嬢)と,被敬者を客体とする行為について行為者を低める方向のもの(謙譲語--たとえば,申し上げる,うかがう)とがある。これらは中国語や朝鮮語にも見られるが,日本語では,ことにやりとりの利益関係を問題にする場合が複雑である(たとえば,聞いてくださる,聞いてさしあげる,聞いていただく,など)。さらに,相手と話題への登場者との関係の顧慮から変容が行われる(たとえば,御尊父様)。第2種は,話し手がその内容にかかわらず,相手を自己に優越するものとするところに発するもので,〈読む→読みます〉〈里にいった→里にまいりました〉のような別の表現(丁寧語)をとる。これはバスク,ミャンマー,ジャワ等にも見られる現象という。近来の日本では,当の相手(たとえば,わが子)よりもわきの相手(たとえば,隣人)を意識して丁寧語が選ばれることがある。これは教養や品位の誇示で,男が女に対して丁寧語を使う傾向とともに,まったく社交的である。〈めし→御飯〉〈腹→おなか〉〈便所→はばかり〉等,あらわを避けた表現が丁寧とされることが多い。相手は表現行為の相手として丁寧語を受けるが,またある場合は同時に表現内容への登場者として尊敬語・謙譲語で遇せられる。登場者としての相手は,一般に直指を避ける方向にあり,ドイツ語,フランス語などでも代名詞を複数で表したりする。日本語では,表現行為の相手として敬意がより強くはらわれる場合には,相手側にない登場者に対する話し手の敬意は表現されないか謙譲語をとる。これは代名詞における話し手相互の勢力関係,自分側と相手側との親近隔離のつりあいに関連する。また,敬語はある程度人種の別を反映する。

全体的に表現を変容するもの(聞こえないぞ→電話が遠いようですが)も実用上重要な役割を演ずるが,日本語の形式としては単語のさしかえ(めしを食う→御飯をいただく,おれを見ろ→私をごらん。方言的に,聞いたか?→聞いたけ?など),また付属的要素のつけそえ(前接--オ話,オせん(べい),ゴ壮健など。後接--神サマ,話さレル,聞きタマエ,走りマスなど。前後接--オ医者サン,オ書きニナル,オ書きナサル,オ書きスルなど)がしきりに用いられる。敬意の度合により,また身分関係の分類に応じて,敬語に段階が認められる。ことに地方的には,今日でも家柄のちがいで用語を細かく段階づけているものがあるが,都会地ではしだいに悪いほうへ乱用される傾きがいちじるしい。標準語としては,比較的簡単な体系に整理されることが望まれている。こんにちの社会体制に対して,敬語使用の過分,過多が問題になる一方,精神を伴わぬ形式的使用,また極端な敬語廃止論が非難され,謙譲と丁寧または尊敬との混乱が誤用のおもなものとされる。国語審議会は1952年に〈これからの敬語〉を定めて,身近な問題について望ましいとする形を示した。

話中の登場者(第三者,相手,ときに自分)を表す語に,その人に対する敬意から特別に添える語。英語,フランス語などでは,Mr.,Mrs.,Miss,Ms.;M.,Mme.,Mlle.,Me.,Mgr.などの比較的限られた種類の語を前におくが,中国語や日本語では,先生,大人,夫人,くん,さん,氏,嬢などを後につけ,その種類が多い。性,職業,階級によって定まっているものもあり,また話し手の打算,相手を顧慮したうえでの敬意の度合によっていろいろに変えられる場合もある。敬称を用いないことを〈呼びすて〉〈呼びつけ〉という。連名の際などには断って省くが,著名人物や歴史上の人物以外には,一般に呼びすては一種の見下げの気分がある。前記の〈これからの敬語〉では,敬称の単一化(話しことばで〈さん〉へ),また職名(課長,専務など)に敬称をつけないことなどが勧められている。なお〈さん〉〈ちゃん〉などは,親愛感の表現となっている。
挨拶
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「敬語」の意味・わかりやすい解説

敬語
けいご
honorific

話の主題になる人物や話し相手に対する敬意を示すために用いられる言語表現。日本語の敬語は一般に,尊敬語謙譲語丁寧語の3種に分類される。尊敬語と謙譲語は話の主題になっている人物に対する話者の敬意を示し,丁寧語は話し相手に対する話者の敬意を表わす。「あのかたになんと申されたのですか」という文では,「かた」は話題の人物に対する話者の敬意を示して「人」「やつ」などと対立する尊敬語,「申さ」はその人物が「申す」という動作をした話し相手より上位であることを示す謙譲語,「れ」は話者の話し相手に対する敬意を表わす尊敬語であり,全体に「です」という丁寧語がついている。このように,日本語では,「おっしゃる;申す」「召し上がる;いただく」「いらっしゃる;参る」など特別の単語によったり,「おからだ」「神父様」など接辞によったり,尊敬語の「れる,られる」「お~になる」など,謙譲語の「お~する」「~ていただく」など,丁寧語の「~です」「~ます」など,助動詞や補助動詞によったり,種々の仕方があり,それらが一種の体系をなしている。実際の言語行動においては,年齢,地位,性別,家柄,親疎など多くの要因がからんで,どの表現を用いるかが規定される。敬語の分類については,謙譲語を自分の行為・ものごとが向かう相手への敬意を表すことばと自分側の行為・ものごとなどを相手に対して丁重に述べることば (丁重語) の二つに分け,丁寧語のうち「お酒」「お料理」など,ものごとを美化して述べることばを美化語として,5分類とする説もある。

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百科事典マイペディア 「敬語」の意味・わかりやすい解説

敬語【けいご】

客観的には同一内容をもつ言語表現が,話し手・聞き手およびその内容に登場する人の間の尊卑・優劣・親疎などを意識することにより左右されるとき,その言語習慣を敬語という。たとえば〈君がくる〉→〈あなたがいらっしゃる〉,あるいは〈机がある〉→〈机がございます〉など。各国語にみられるが,日本語では特に複雑に発達している。敬語は,原理的には話題への登場者に関するものと,聞き手に関するものとの二つに大別されるが,一般には次の3種に分けて説明される。第1種は尊敬表現で,話題への登場者,またはその行為,作用,あるいは関係する事柄に対する話し手の敬意の表現。〈仏さま〉〈いらっしゃる〉〈先生のお子さま〉の類。第2種は謙譲表現で,話題になっている者への敬意を,その者に対する話し手の行為などを低めるしかたで表す表現。〈さしあげる〉〈うかがう〉〈いただく〉の類。第3種は話し手の聞き手に対する敬意を直接に表現する丁寧表現。〈ます〉〈です〉〈でございます〉の類。敬語の簡略化がしばしば提唱される一方,〈犬にごはんをあげる〉など,ときに敬語の過剰,誤用がみられ,そのあり方が問題となっている。
→関連項目日本語

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就活用語集(就活大百科 キーワード1000) 「敬語」の解説

敬語

面接の際に緊張してあがってしまうのは仕方のないことですが、敬語に慣れていないために、肝心の話がしどろもどろになって要領を得ない学生が多いのは残念なことです。敬語・言葉遣いの基本を学んでおきましょう。敬語には次の3種類があります。■尊敬語…相手に敬意を表すために、相手の動作や状態、持ち物などを直接敬う言葉。■謙譲語…自分や、自分側の動作、持ち物などをへりくだって言う言葉(結果として相手を敬う形になる)。■丁寧語…相手に対して品のよいていねいな対応が必要な時に使う言葉。

出典 マイナビ2012 -学生向け就職情報サイト-就活用語集(就活大百科 キーワード1000)について 情報

世界大百科事典(旧版)内の敬語の言及

【ジャワ語】より

…無声と有声の対立がしだいに消滅し,後続母音の声調の高低に転移しつつある。またジャワ語の特徴として〈絶対敬語〉的敬語法を発達させていることがあげられる。普通語(ンゴコ)に対して約900語の尊敬語(クロモ)と,約250語の崇敬語(クロモ・インギル)とがある。…

【接頭語】より

…接頭語には,カ細(ぼそ)い,ヒ弱い(カタカナで示される部分が接頭語。以下同様)などのように今日では限られた結合しかない,したがって意味の明確に取り出しにくいものから,マッさお,スッぱだか,コざっぱりなど比較的結合の自由なものまであり,さらにミ仏,オ車,ゴ成功などの敬語の1類はよほど自由な結合をして,ふつうに連濁を起こさない。テ痛い,トリ調べ,サシ上げる,ヒッかく,カッ払うなどは本来は自立する単語であることが明らかであるが,固有の具体的意味が薄れて単なる強調を示すものとなっている点で接頭語的である。…

【チベット語】より

…語順は,主語+目的語+述語が原則であり,修飾語は被修飾語の後に置かれる。文語にも敬語形式が認められるが,とくにラサ方言では豊富な敬語形式と複雑な用法を発達させた。以上のほかに,少なくともラサ方言の特徴として,述語の表す動作・状態などの帰属する主体を,話し手が身近なものと感じて発話するかどうかによって〈近称〉と〈遠称〉の範疇が区分され,それぞれに異なる助動詞が呼応することを挙げておく。…

【日本語】より

…これらの特徴は,朝鮮語(例:na‐nɯn〈私は〉 chɛ‐gɯl〈本を〉 ilgɯo〈読みます〉)やモンゴル語,トルコ語(例:oku‐t‐ul‐dı〈よま・せ・られ・た〉)などアルタイ系言語(アルタイ諸語)と共通している。 また日本語は複雑な敬語法にしばられていて,普通形〈たべる〉が尊敬形〈おたべになる〉のように形態的に変化する。こうした敬語法は朝鮮語に見られるだけである(例:等称mɔ‐ne〈たべる〉,上称mɔk‐sɯmnida〈おたべになる〉)。…

※「敬語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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