門松(読み)カドマツ

デジタル大辞泉 「門松」の意味・読み・例文・類語

かど‐まつ【門松】

正月に家の門口に立てる飾りの松。元来、年神としがみしろであったとみられる。中世以降、竹を添える場合が多い。かどのまつ。まつかざり。 新年》「―の雪のあたたかに降りにけり/涼菟
[類語]松飾り注連飾り

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精選版 日本国語大辞典 「門松」の意味・読み・例文・類語

かど‐まつ【門松】

  1. 〘 名詞 〙 新年を祝って家の門口などにたてる一対または一本の松。中世以降、竹をいっしょに飾ることが多い。松飾り。かどのまつ。《 季語・新年 》
    1. 門松〈難波鑑〉
      門松〈難波鑑〉
    2. [初出の実例]「門松をいとなみたてるそのほどに春明がたに夜や成ぬらん〈藤原顕季〉」(出典:堀河院御時百首和歌(1105‐06頃)冬)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「門松」の意味・わかりやすい解説

門松
かどまつ

正月に家の内外に立てる生木のことで、拝み松、飾り松、祝い松、門ばやし、門神柱など、所によっていろいろな呼び方がされている。松を門口に立てる例が多いことから門松と総称するのであるが、材料、場所、形式とも全国一律とはいえない。木は松のほか、楢(なら)、椿(つばき)、柳、栗(くり)、朴(ほお)、栃(とち)、榊(さかき)、樒(しきみ)、竹などが単独もしくは2、3種いっしょに用いられ、立てる場所も門口に限らず、外庭正面や屋内の座敷中央、床の間神棚土間など、土地により家によりさまざまである。屋外の場合は左右一対を立てるのが普通で、間に注連縄(しめなわ)を張り渡すこともあるが、屋内の場合は1本のことが多いようである。いずれも芯松(しんまつ)を用いるのが好ましいとされ、7段、5段、3段の枝ぶりのよいりっぱな木を立てる所も多い。ユズリハダイダイ、昆布(こんぶ)を結び付けたり、根元には薪(たきぎ)を寄せかけたり、屋内のものは米俵を台にして立てたりもする。

 門松を立てる理由は、正月の単なる飾り物としてではない。現在では明確に意識されなくなってはいるが、門松は来臨する歳神(年神)(としがみ)の依代(よりしろ)の役を果たすものであった。南関東や中部地方その他で、門松に藁(わら)製の椀(わん)形の容器を結わえ付けて、中に雑煮などを入れ供えたり、大分県臼杵(うすき)市津留で門松の前に3段の鏡餅(かがみもち)を折敷膳(おしきぜん)にのせて供えるように、ハレ(晴)の食品を供える例の多いこと、およびお松様などと敬称でよび、実際に手をあわせて拝むことのあることなどから、依代であったことが推測できるのである。樹木に神霊が依(よ)り着くとする信仰はけっして珍しいことではない。したがって、近くの山から門松用の木を切ってくる際にも、これと決めた木に洗米を供えたり、拍手(かしわで)を打ち敬虔(けいけん)な心意の下に鉈(なた)を入れる地方もあり、迎えてからも立てるまでは家の清浄な場所に保存すべく配慮される。切ってくる日はかつては広く12月13日とされていた。取り去るのは1月4日、7日、14日など所により一定しないが、九州地方ではこの門松を7日の鬼火焚(だ)きに燃やし、他の地方では小正月左義長(さぎちょう)、どんどの火で焼却するのが一般である。

 第二次世界大戦後、山林管理と生活改善運動の面から、松を伐採してはでやかに立てるのをやめる傾向にあり、過渡的なものとして松の絵を紙に印刷して門口に貼(は)り付けることが行われたが、農山村からはしだいに門松が姿を消しつつある。逆に都市部においては、職人などに頼んで門口に松、竹を飾る風が盛んになりつつある。なお、氏神が松で目を突いたからといい、松を立てるのを禁忌にしている地方も少なくない。

[田中宣一]


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改訂新版 世界大百科事典 「門松」の意味・わかりやすい解説

門松 (かどまつ)

正月,家の内外に立てる生木のことで,門口に松を立てる例が多いので門松と総称されている。しかし,カドバヤシ門木,拝み松などと呼ぶ所もあり,場所も屋敷の正面や屋内の土間,床の間,神棚の前に立てたり大黒柱にくくりつけたりする例も少なくない。また用いる木も松の他に栗,サカキ,ナラ,ホオノキ,竹,あるいはそれらを2~3種混ぜたものなどがあり,土地によって一様ではない。門口の左右に立てて間に注連(しめ)縄を張ったり,根もとに薪木を寄せかけたり,屋内の場合には米俵に立てたりする。お松様と敬称で呼んだり,雑煮などを供えて拝む所も多いことから,本来は降臨する年神の依代(よりしろ)ではなかったかと考えられている。松などを切ってくる日は12月13日とする所が多く,12月30日までには立て終える。はずすのは1月4日,7日,14日などで,そのあと7日や小正月の火祭に焼却する所が多い。氏神が松で目を突いたため,門松を立てないという伝承も各地にある。
(かど)
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「門松」の意味・わかりやすい解説

門松
かどまつ

正月に歳神を家々に迎える依代として門口に立てる松飾り。古くは 12月13日,普通は年末近くに山へ行き,マツの木の芯の部分をとるが,どこの山からとってきてもよいとされていた。地方によって異なるが,門松は 1月4~15日頃まで立てておき,供物を供えたりしたのち,注連飾り(しめかざり)などとともに小正月のドンドの火で焼く(→左義長)。以前はツバキ,サカキ,シキミ,シイ,スギなどを立てる例もあったが,マツがめでたい木と考えられるようになってからマツが多く用いられるようになり,同じ理由からタケを添える地方も多くなった。また門口に立てず,拝み松などといって床の間神棚だけに飾る地方もある。小正月を重んじている地方では,門松との重複を避けて,小正月には若木を立てる。若木は一般に落葉樹のことが多い。一方で,先祖がマツで目を突いたとか,戦いに負けて年末にこの地に落ちのび,門松を立てる暇がなかったなどの由来をもって門松を立てない家もある。

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百科事典マイペディア 「門松」の意味・わかりやすい解説

門松【かどまつ】

正月に門口に立てる松。門木(かどき),お松様とも。本来は年神(としがみ)を迎えるための依代(よりしろ)で,ナラ,ツバキ,トチノキ,スギ,竹,ホオノキ,ミズキ等も用いられる。12月13日に山から採ってくるのを松迎えという。期間は7日や小正月までとされ,小正月にこれを焼く風も広く行われている。→左義長(さぎちょう)

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「門松」の解説

門松
かどまつ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
延享1.2(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の門松の言及

【門】より

…薩摩国では室町時代のころより,領主の収取単位となる農民数個の家族や経営の集合体が門と呼ばれ,江戸時代の門割(かどわり)制度の前提となったが,この用法は,農民の家族・経営体そのものを指す門と領主の隷属民としての門の意味が重ねられて生まれたケースであると考えられる。【義江 彰夫】
[建築・民俗]
 建築としての門を指す例としては,棟門(むなかど)((もん))があるが,門松(かどまつ),門付(かどづけ),門出(かどで)のような場合は,もう少し広い意味で,屋敷の出入口や門の付近を指したと考えられる。方言で〈かど〉が家の前の空地や戸外を指す場合があるのは,農家や町家では建築としての門を建てることが少なく,家の前方の空地や道路が屋敷の出入口を構成していたからであろう。…

【正月】より

…正月のしたくの開始は,一般には12月13日である。山へ行って門松や正月の飾木を取り,家のすす払いをする。家を清め,門松を立て,しめ飾をするのは,そこが神聖な神祭の場であることを表すのである。…

※「門松」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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