森永砒素ミルク事件

六訂版 家庭医学大全科 「森永砒素ミルク事件」の解説

森永砒素ミルク事件
(中毒と環境因子による病気)

 粉ミルクの安定剤として添加した第二リン酸ソーダに含まれていた砒素によって起こった、乳児の砒素中毒です。

 1955(昭30)年初夏、西日本の各地に、食欲不振、不眠、皮膚の発疹色素沈着、下痢嘔吐発熱、腹部膨満(ぼうまん)・肝の肥大などを示す乳児が多発して、1万2131名の患児が発生し、約130名が死亡しました。

 原因は、森永乳業徳島工場で製造された粉ミルクに乳質の安定剤として添加された第二リン酸ソーダに砒素(亜砒酸(あひさん)As2O3)が3~9%含まれていたことによるものでした。患児は1日2~4㎎(成人の亜砒酸の摂取限度量は1.5㎎)、合計で90~140㎎の亜砒酸を摂取していたと推定されています。

 事件発生の翌年、中毒児を対象として検診が行われ、ごく少数の例外を除いて異常なしと判定され、事件は解決したと思われていました。しかし15年目の追跡調査で、すべて砒素中毒と関係あるか否かは断定できないものの、難聴、精神科的異常が多く認められたとの報告がありました。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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