欧州近隣政策(読み)おうしゅうきんりんせいさく(その他表記)European Neighbourhood Policy

知恵蔵 「欧州近隣政策」の解説

欧州近隣政策

EU拡大に伴い、近隣諸国との協力関係を結ぶことによってその地域の安定・安全・繁栄を強化する政策。1995年11月のバルセロナ外相会議で合意された「欧州・地中海パートナーシップ」(バルセロナ・プロセス)で、地中海地域の近隣諸国と政治・経済・社会に及ぶ広範な協力関係を築くことが謳(うた)われた。2004年5月の第5次拡大(拡大EU)でキプロスマルタがEU加盟を果たし、アルジェリア、エジプト、イスラエルヨルダンレバノンモロッコ、パレスチナ解放機構(PLO)、シリアチュニジアリビアベラルーシモルドバウクライナアルメニアアゼルバイジャングルジアなどの諸国・機構がパートナーとなっている。EUは主に97年から99年にかけて、東欧、ロシア、中央アジア諸国とそれぞれ協力関係を結び、市場経済化と民主化への移行プロセスを支持するため、巨額の財源を使ってこれらの国に技術援助を行っている。こうした背景の下、03年10月の欧州理事会で、東・南欧近隣諸国との関係枠組みである「広域ヨーロッパ(ワイダー・ヨーロッパ)」構想を採択したことを出発点として、それらの諸国の安定・安全・繁栄を目的としたEUの「ヨーロッパ近隣政策」が進められるようになった。04年5月のEU拡大時に、財政支援や経済社会開発の協力の方法などに関する「戦略ペーパー」を発表、パートナー諸国との「行動計画」への調印が進められている。

(渡邊啓貴 駐仏日本大使館公使 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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