日本大百科全書(ニッポニカ) 「歌舞伎細見」の意味・わかりやすい解説
歌舞伎細見
かぶきさいけん
歌舞伎の研究書。飯塚友一郎著。1926年(大正15)第一書房刊。その7年前に出版された『歌舞伎狂言細見』を改訂・増補したもの。量が多くしかも筋が複雑に入り組んでいる歌舞伎の作品につき、それぞれの作の背景となっている「世界」や題材によって系統的に整理・分類したうえ、由来や梗概(こうがい)、参考書を付してある。分類は、稗史野乗(はいしやじょう)、仇討(あだうち)狂言、御家騒動、縁起霊験、怨霊変化(おんりょうへんげ)、名人奇人、義人侠客(きょうかく)、白浪(しらなみ)毒婦、心中情話、喜劇、浮世風俗の11種。巻末に狂言名と登場人名の索引が付されていて便利である。こうした系統的かつ網羅的な作品概観の書はいまもほかに類書がなく、歌舞伎研究のために重要な業績として価値が高い。
[服部幸雄]