改訂新版 世界大百科事典 「正統王党派」の意味・わかりやすい解説
正統王党派 (せいとうおうとうは)
légitimistes
正統王朝(ブルボン家)によるフランスの王位を要求する政治党派。正統王党派という呼称そのものは,七月革命によって正統王朝の王政復古が打倒された後政権の座についたオルレアン王党派に対照してつけられたものである。これ以後正統王党派はオルレアン王党派を王位奪者とみなし,両派の敵対は19世紀末まで続くことになる。正統王党派はおもに貴族出身の大土地所有者と教会を基盤としていた。第二共和政下においてはオルレアン王党派とも一時的に共同歩調をとったが,両者の対立は克服されず,ルイ・ナポレオンによるクーデタを許した。しかし,正統王党派は第二帝政が永続するとは予想せず新たな王政復古を期待していた。そのため彼らは政治の舞台から降りて静観の態度をとった。1870年に第二帝政が崩壊するや,彼らはシャルル10世の孫のシャンボール伯Henri V,comte de Chambord(1820-83)をフランス王位につけようとした。73年正統王党派はオルレアン王党派との合体に成功し,シャンボール伯を国王とする王政復古の企図が成るかにみえたが,シャンボール伯が三色旗にかえて正統王朝の白旗を国旗にすることに固執したため,結局オルレアン王党派は反対にまわりこの企ては挫折した。
83年にシャンボール伯が後継ぎなしに死去するや,大部分の正統王党派はオルレアン家のパリ伯をフランス王位の継承者として承認し,固有の政治勢力としては衰退していった。
執筆者:木下 賢一
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