此処な(読み)ココナ

デジタル大辞泉 「此処な」の意味・読み・例文・類語

ここ‐な【×処な】

《「ここ(此処)なる」から》
[連体]
人や物を表す語の上に付いて、それがすぐ手近にあることを示す。ここにいる。ここにある。この。
「―殿様へ売ったほどに、そなたへやることはならぬ」〈虎明狂・雁盗人
人や物を表す語の上に付いて、それをののしっていう意を強める。
「―時致の腰抜けめ」〈伎・助六
[感]事の意外さに驚きあきれたときにいう語。これはなんとしたことだ。これはまあ。
「―、びっくりとしたが、わごりょは合点がゆかぬ」〈虎明狂・千切木

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精選版 日本国語大辞典 「此処な」の意味・読み・例文・類語

ここ‐な【此処な】

(「ここ(此処)なる」の変化した語で、「なる」は「にある」の意)
[1] 〘連体
① 物を表わす体言の上に付いて、それがすぐ近くにあることを示す。ここにある。手元の。
※俳諧・犬子集(1633)一六「つもりやせましここな銭箱 はたごやのあいそふらしきをなごにて」
② 人を表わす語の上に付いて、その相手がすぐ近くにいることを示す。ここにいる。ここの。「ここな人」「ここな者」などの形で相手をさす場合には、見下す意を含む。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※虎寛本狂言・連歌盗人(室町末‐近世初)「『ヱイここな者』『和御料か』『そなたか。扨今のはおびただしい鳴り様では無かったか』」
③ 人や物をののしっていうとき、その人や物をさし、ののしりの意を強めていう語。この。
浄瑠璃・甲子祭(1684)一「行綱大きに腹を立、ここな坊主は人をなぶるか〈略〉と気色変わっていかりけり」
[2] 〘感動〙 意外なことに驚き発する語。これはまあ。おやおや。おやまあ。
※虎明本狂言・乳切木(室町末‐近世初)「ここな、びっくりとしたが、わごりょはがてんのゆかぬ」

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