狂言の曲名。雑(ざつ)狂言。連歌初心講の当(とう)(当番)を勤めることになったこのあたりの者(シテ)は、貧しくて費用に困り、同じく貧しい当の仲間と相談して2人で金持ちの家へ盗みに入る。しかし、床の間の懐紙に書いてある句を見て、つい添え発句・脇句(わきく)を付けて打ち興じてしまう。そこを亭主にみつけられるが、この亭主も連歌好きで、自分の第三句に四句目がうまく付けられたら命を助けようという。みごとに四句目を付け、2人は顔を隠しながら帰ろうとするが、亭主に顔見知りの者と見破られ、しかたなくわけを話す。同情した主人が両人に大刀・小刀を与えると、2人は喜びを謡い上げて帰っていく。連歌が流行した中世庶民社会を反映した曲。類曲に『蜘盗人(くもぬすびと)』がある。
[池田英悟]