改訂新版 世界大百科事典 「殿上淵酔」の意味・わかりやすい解説
殿上淵酔 (てんじょうえんずい)
正月や五節の大礼などのあと,清涼殿の殿上に天皇が出席し,蔵人頭以下の殿上人が内々に行う酒宴。正月の場合は2日,3日中の吉日を選んで行われた。《建武年中行事》などによれば蔵人頭以下が台盤に着し,六位蔵人の献杯につづいて朗詠,今様,万歳楽があったのち装束の紐をとき,上着の片袖をぬぐ肩脱ぎ(袒褐)となる。ついで六位の人々が立ち並び袖をひるがえして舞い,拍子をとってはやす乱舞となる。天皇は殿上の半蔀(はじとみ)のあたり,または年中行事障子の辺の倚子にかけて見る。終わって蔵人頭以下が中宮の御所に参り淵酔が行われる。兵乱,諒闇および伊勢神宮,春日神社などに事のあるときには行われない。その起源は明らかでないが,正月の淵酔は《中右記》に,また大嘗会,新嘗会のそれは《小右記》に〈殿上群飲〉とみえるところから,平安時代の摂関期の一条天皇のときには行われていたのであろう。正月の淵酔は,応仁の乱後絶え,1491年(延徳3)および1522年(大永2)に一時再興されたが,その後再び絶えてしまった。
執筆者:山中 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報