い‐し【倚子】
〘名〙 腰かけの
一種で、
宮中では
高官だけが
使用をゆるされたもの。背もたれとひじかけのあるものとないものがあり、その形は、用いる者の
身分によって違いがあった。立礼
(りゅうれい)の際に使用。〔
延喜式(927)〕
※枕(10C終)一六一「
上達部のつき給ふいしなどに女房どものぼり」
[
補注]禅宗渡来以後、
唐宋音に基づいて「いす」というようになり、
用字も多く「
椅子」とするようになった。
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デジタル大辞泉
「倚子」の意味・読み・例文・類語
い‐し【×倚子】
腰掛けの一。宮中では貴人高官が使用を許されたもの。形や背もたれ・ひじ掛けの有無などは身分により違いがあった。
「螺鈿の―立てたり」〈源・若菜上〉
[補説]中世以降、禅僧が多く使い、唐音を用いて「いす」といい、「椅子」と書くことが多くなった。
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倚子
いし
方形に脚付きで、座の左右に勾欄(こうらん)をつけ、背部に鳥居形の背もたれのある腰掛。正倉院に遺例がみられるが、平安時代に宮中で天皇をはじめ高官の公卿(くぎょう)が使用した。天皇用のものは御倚子または倚子の御座と称され、紫宸殿(ししんでん)には黒柿(くろがき)製、清涼殿(せいりょうでん)には紫檀(したん)製のものが置かれたが、近世からは漆塗装するようになった。上に錦(にしき)や綾(あや)の毯代(たんだい)を敷き、幼帝の場合には踏み台を要する。皇太子が元服のときに平文(ひょうもん)の装飾を施した小倚子を用いる。
[郷家忠臣]
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いし【倚子】
平安時代初期、宮廷で用いられた座具。左右と後部に手すり、さらに鳥居の形をした背もたれがついた4本脚の腰掛け。
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普及版 字通
「倚子」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
世界大百科事典(旧版)内の倚子の言及
【いす(椅子)】より
…また日本のいすは中国とのかかわりが深かった。イスを現在では〈椅子〉と書くが,これは鎌倉時代以後で,平安時代には〈倚子〉と書きイシとよんでいた。 日本で最初にいすが使われたのは,埴輪のいすから判断して6~7世紀ころからと考えられる。…
※「倚子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」